「病んだアメリカを描いたワクチンのような作品」世界が絶賛した映画『シヴィル・ウォー/Civil War(2024)』物語ラストまでネタバレと海外の反応を紹介。現代のアメリカで内戦が起きたら「国民はどんな行動をするのか?」をジャーナリスト目線でリアルに描いています。スカッとしたと称賛される一方、リアルではないと否定されている本作ですが個人的には「病んだアメリカをリアルに描いた皮肉たっぷりの反戦映画」と感じました。
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もくじ
映画『Civil War(2024)』物語ネタバレ
アメリカ合衆国では19の州が合衆国から離脱しテキサス州とカリフォルニア州からなる「西部勢力」と、連邦政府による第二次南北戦争が始まっていた。
3期目を迎えるアメリカ大統領(ニック・オファーマン)は、敵対する西部勢力の民兵組織「ウェスター・フォース(WF)」と連邦政府の武装組織「ロイヤリスト」の攻勢についてメディアに説明し、戦果は大勝利だと締めくくる。
フォトジャーナリストのリー・スミス(キルスティン・ダンスト)は、は同僚のジョエル(ワグナー・モウラ)と一緒に抗議デモの真っ最中のダウンタウンに向かい、警察とデモ隊が争う風景を撮影をしていた。リーはデモに巻き込まれて負傷した若いジャーナリストのジェシー・カレン(カイリー・スペイニー)の介抱をしていると、すぐ目の前で爆破テロが起き多くの警察官とデモ隊が巻き込まれてしまう。ジャーナリストのリーとジェシーはその余波の写真を撮り続けるのだった。
新米記者と最前線へ
リーはジョエルを連れて、恩師のサミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)とホテルで会って、3人で内戦の最前線であるワシントンDCに向かう計画を話し合い解散するが、リーを待っていたジェシーにつかまってしまい、一緒にDCに向かうことになる。
翌日、一行は出発の準備を整え、戦争によって爆撃され放置された車の間を走らせ、道中で軍による検問を何箇所か通りしばらく車を走らせた後、彼らは給油のためにガソリンスタンドで停車する。
スタンドにはアサルトライフルで武装した自警団がいてリーたちは彼らと世間話をする。リーとジェシーは彼らが捕まえた2人の強盗を見せられるが、2人の男は酷い暴行を受け手首を吊るされていた。リーは2人を処刑するという男にあなたも入った写真を撮らせてくれとジャーナリスト魂を発揮させジェシーを驚かせる。
4人は廃墟になったショッピングモールで夜を過ごし、遠くで光り輝く銃撃戦の様子を眺める。
最悪な状況
4人はビルで激しい銃撃戦を繰り広げている場面に出くわし、リーとジェシーはカメラを携えて目の前で撃たれる民兵の姿を写真に収めていく。2人は民兵を追ってビルの中に入っていくと、窓際の一室で負傷したスナイパーを見つけた民兵たちが殺さないでくれと懇願する間も無く頭を撃ち抜いて殺す場面を目撃する。戦いが終わり、捕虜となった民兵を並べてると、陽気な音楽と一緒に笑いながら捕虜を撃ち殺す姿をジェシーは困惑しながらもカメラに収めていく。
4人は難民キャンプに到着して束の間の休息と食事を得る。空いた時間にジェシーが撮った写真を見ながら、ジェシーはリーのキャリアの始まりとなった代表的な大虐殺される人々を収めた完璧なショットに憧れたと伝え、リーはジェシーの写真を褒める。
写真を撮りながら旅を続ける4人は、戦争の影響を受けていないように見える町に立ち寄る。一行は着替えのために立ち寄った。ジョエルは店の主人に、この国で内戦が起きていることを知っているかと尋ねるが、女性はジョエルに、この町には関係のないことだと答える。
途中、広大な草原でクリスマスソングが大音量で流れ、道には民兵の死体が放置されている異様な場所に出くわす。慎重に車を進めると突如狙撃されたため、車を近くの家屋に隠して身を隠すと、どうやら離れた場所の屋敷から狙撃をする人と、家屋に隠れながら屋敷に銃を向ける狙撃手二人組とでスナイパー合戦をしている真っ最中に出くわしてしまったことがわかる、ジョエル、リー、ジェシーは狙撃兵に質問しながら彼らが屋敷のスナイパーを撃ち殺すのを目撃する。
無法者たち
その後、一行は背後からもうスピードで近づいてくる車に警戒してスピードを緩めると、車を運転していたのはジョエルの記者仲間で陽気なトニー(ネルソン・リー)とボーハイ(エヴァン・ライ)だった。トニーは車を走らせながら横付けしてリーの車に乗り込むと、ジェシーも同じようにボーハイの車に乗り込む。ボーハイとジェシーが乗った車はスピードを上げて遠くに去ってしまい、遅れてリーがボーハイの車に追いつくと、そこには農場の脇で車の扉を開けぱなしになって駐車しているボーハイの車、そしてその横で武装した連邦政府のロイヤリストの兵士に連れ去られているボーハイとジェシーの姿があった。
リーたちは車を降りて、兵士たちを率いているボス(ジェシー・プレモンズ)に話しかけるが、ボスは聞く耳を持たずに突然ボーハイを射殺したため一向に緊張が走る。ジョエルは俺たちはアメリカ人だと言って彼を説得すると、ボスがリーたちに生まれはどこだ?と質問を始めジョエルたちは出生地を話していき、トニーが香港出身だと伝えると、ボスは中国か?と聞き返しながらトミーを射殺する。
ボスたちに銃を向けられたジェシーたちが死を覚悟すると、車に残っていたサミーが猛スピードで兵士たちに突っ込み車に乗れと叫ぶ。
ジェシーが彼らが死体を埋めていた穴に落ちてしまい周囲を見渡すとそこには黒人などの有色人種の遺体だけが積み上げられていた。ここでロイヤリストたちは罪のない有色人種だけを無差別に殺し続けていたことが判明する。
ジョエルは固まるジェシーを救って車に乗り込み逃げ出すが、生き残った兵士が撃った銃弾がサミーの胸を貫き負傷してしまう。
無意味な死
ジョエルが運転を引き継ぎ、燃えた森の中を走りながらシャーロッツビルの西部軍基地に到着するが、サミーは死亡してしまう。ジョエルたちは基地に滞在していたイギリス人ジャーナリストのアーニャ(ソノヤ・ミズノ)から、ロイヤリストの将兵たちが全員降伏して内戦が終結に向かっている話を聞いて、サミーを失ったことを含め、自分たちが経験したすべての苦労は信じられないほど無意味なものだったと知ってジョエルは怒り狂う。
サミーたちの死を無駄にしないためリー、ジョエル、ジェシーの3人はWFに合流して、ホワイトハウスを襲撃する大規模作戦を取材するため共にワシントンへ向かう。
アメリカの首都でアメリカ人同士による激しい銃撃戦が繰り広げられていた。武装ヘリによる爆撃、戦車の砲撃、ロイヤリストによる反撃、次々に死んでいく兵士たち、三人は苛烈な戦場の合間を縫うように歩き続け、ジェシーは目を輝かせながら写真を撮る一方、リーは内戦の状況にショックを受けてカメラを持つことができずにいた。
ロイヤリストが築いたホワイトハウスへのバリケードを戦車が破壊すると、大統領選用車両が飛び出し包囲網を抜けようと飛び出すが、戦車や走行車両に阻まれ中にいたシークレットサービスや関係者たちは皆殺しにされてしまう。
エンディングネタバレ「大統領に何が起きるのか」
車の中に大統領がいないことに気がついた一行はホワイトハウスに乗り込み、ジェシーたちに後ろに下がっているように指示を受け兵士たちについて行く。大統領の執務室前で待ち構えていた秘書官を無慈悲に殺害し、奥に進み続ける兵士たちを追いながら、リーとジェシーは兵士の間に潜り込みながらシークレットサービスと兵士の銃撃戦の写真を撮影し続ける。
我慢できなくなったジェシーが兵士との間に割って入って写真を撮ろうとするが、待ち構えていた兵士がジェシーに向かって銃を向けているのを見たリーがジェシーを庇って撃たれてしまう。
リーの最後の姿を写真に収めたジェシーが歩いて大統領執務室に入ると、大統領が兵士たちに引きずり倒され目の前で銃撃を受けている瞬間で、ジェシーは撃った兵士、ジョエル、そして大統領の遺体をカメラに収めたところで映画は終了する。
ネタバレ有り海外の反応評価
大手映画レビューサイトIMDbの評価を一部翻訳して紹介。
9/10
予告編はこの映画を正当に評価していない…。
この映画には純粋にすごい感動した。予告編を見て、「エクスペンダブルズ」のような映画を期待していた。現実は、この映画は素晴らしい。ダークな展開と、フォト・ジャーナリズムと戦争の恐怖についての簡潔な洞察。この映画の制作には、明らかに多くの時間と労力が費やされている。俳優たちの動きや状況に対する反応がリアルさを増し、見る者を楽しませてくれた。キルスティン・ダンストは私の第一候補ではなかったが、彼女の演技は的確だった。この映画は映画館のアイマックスで観ることをお勧めする。ドラマの多くは必ずしも小さなスクリーンには移らないだろう。お薦めです。
8/10
現実的な人々
誰もが典型的な戦争映画を期待していたと思う。これがアレックス・ガーランドなのだ。彼が典型的な作品を撮ったことがあるだろうか?この映画の核にあるのは人間性であり、役柄のいたるところで起こる戦争の残虐性を見せるだけでなく、背景は私たち自身の裏庭であり、私たち自身である。彼は私たちに鏡を向け、不快な可能性やシナリオに直面させる。写真も加わって、メッセージを伝えている。人々が不満に思っている “ストーリー “のようなものはあるのだろうか?しかし、それに気づかないのは愚かなことだ。特に、ある人物が人間性を保とうと少しずつ努力しながらも、徐々に鈍感になっていく様子に、私は本当に心を奪われた。この映画はずっとあなたの心に残り、私たちがお互いの違いに関係なく理解し合うことを前提としている国に住んでいる代わりに、この過激主義が私たちの国で繰り広げられていると言われていることを教えてくれる。それともベトナム?
この映画が、そのような疑問を人々に投げかけるきっかけになることを願っている。
10/10
元FBI捜査官の視点:歴史上最も重要な映画の一つ
誰もがこの映画を見るべきだ。ネタバレはしないが、現代アメリカの内戦における生活がどのようなものかを垣間見ることができる。確かに、戦争に市民的なものはない。この映画は私にとって恐ろしい映画である。可能性はないが、大きな飛躍でもない。政府の崩壊はすぐに起こる。旧ソ連国民に聞いてみればいい。
この映画は魅惑的で強烈だ。映画館で私の隣にいたカップルは、あまりの暴力に20分で席を立ってしまった。戦争とはそういうものだ。この映画は戦争を賛美しているわけではない。残念ながら戦争が必要な時もある。どうか、私たちのこの偉大な国の中で、戦争を必要なものにしないでほしい。
まとめ「完璧に理解はできないが面白いな」
アメリカの冷戦を描いた作品?
そんな政治っぽい映画苦手なんだよなーと少し遠慮していたが、私のような浅い人間でも楽しめるエンタメ映画だった。良い意味で予告を裏切ってくれたおかげでこんなに満足できる映画に出会えた。
というのもこの映画は予告だと激しいドンぱちが繰り広げられる戦争映画だと思っていたが、実際にはアメリカで内戦が起きたら国民は何を思いどんな行動をするのか?という部分に焦点を当てており、銃撃戦だけではなく今まで隠されていたが内戦をきっかけに台頭するファシストの暴挙や、我関せずなどの無関心、現実逃避、銃社会におけるリアルな狂気、それぞれの正義などが細かくリアルに描かれている。
しかも全体的に少し皮肉っぽい内容で、昨今のアメリカの“めんどくせぇ主張に配慮しまくった世の中“をバカにしたような、全アメリカ国民が正直なところスカッとするシーンが描かれているのが賛否別れながらもものすげぇ盛り上がっている理由だと思う。
先に言っておくけど、申し訳ない、私は日本にもアメリカにもそれほど興味はない。人に迷惑をかけず、静かに映画を見ていたいだけの人間。日本人だけど日本語も拙なく、よくメールで誤字脱字ひどいぞカスとか送られてくる程度の浅い人間だということを伝えたい。
ここから先の感想は、日本人としての目線で話していることを了解してほしいってこと。差別的な意図はないよ。
この映画は冒頭からアメリカで内戦が起きた。政府の腐敗が原因のようだ。西側WFvs政府連邦ロイヤリストの対立が起きているから、ジャーナリストたちが大統領にインタビューするためにワシントンDCに向かい、その道中でのかつてない大国で起きた未曾有の内戦の影響や状況を描いている。
ただ、その内容がアメリカ国内で内戦というとんでもない設定を盾に、宗教とか差別とか銃規制とか“世論の主張““弱者の主張”に辟易しているアメリカ国民の本音を激情に乗せて描かれているのが興味深い。
そもそもこの映画の中でこの戦争がなぜ起きたのか?は一切説明していないのだ。監督は戦争のきっかけは問題じゃない、アメリカで内戦が起きた時、アメリカ国民の狂気や行動が描きたかったんだと思う。
これは私のイメージによるものだが、
銃を持ったならせっかくなら人間を撃ってみたい、俺の街を守るためならリンチも射殺もする、俺の街、俺の国を自分たちで守るのが正義だ。そう、かつてインディアンたちをぶっ殺して開拓した先祖みたいに。
世界大戦で日本人とかベトナム人とか片っ端からぶっ殺して勝利を収めてきた英雄たちみたいに俺も活躍してみたい。
アメリカは白人の国なんだから有色人種は死ぬべきだし、捕虜とか面倒だから殺すし、勝利すれば気持ち良いし、勝者こそが正義だ。
大統領だって命令があれば殺すし。
アメリカの代表である大統領を狙う奴等はアメリカ人だろうが敵だから殺す。
文字にすると怖いが、この映画に登場するアメリカ人たちはみんな“それぞれの正義に取り憑かれている“ように見える。
内戦の結果はラストに描かれるが、映画を見ながら俺は政府側について戦いたいと思った人もたくさんいると思う。
映画館で本当に、本当に色々なシーンでそれぞれの思いを口にする人がたくさんいた。みんながみんな同じではない。
アメリカ人も人間だ、人間は正義の名の下に簡単に狂気に染まるのだ。
誰が、何が、どこが正解がない。
リアルな人間模様を描いていた。
戦慄の戦争体験映画。
いや、反戦映画か。
これは面白いし怖い。
新米ジェシーを庇ってリーが死ぬが、記者なんていつでも死ぬから映画的な感動シーンには一切なることもなく、淡々と写真を撮るジェシーの姿もジャーナリストとしては正解だし、彼女はリーの死でジャーナリストとして完成した瞬間でもある。このシーンが一番背筋がゾクゾクして気持ちよさを感じた。
観終わった直後にこれ書いているから支離滅裂かも。
まだ興奮している。
ネタバレした後だけど、この作品の詳細を知りたい人はこちら↓
2024年アメリカ公開映画
ネタバレ↓