「信じられないほど挑戦的な映画」アウシュビッツ収容所の外で無関心に過ごす将校一家を描いた映画『関心領域/The Zone of Interest』物語ネタバレと海外の反応評価まとめ。将校ヘスの屋敷のすぐ隣は悪名高いアウシュビッツ収容所で、昼夜を問わず銃声と叫び声が聞こえるが、ヘスの家族達は聞こえないのか何も気にすることなく裕福な日々を過ごす。この対比に恐怖、幾何学的な計算高さ、刺激を感じる人など物議を醸しています。
もくじ
映画『関心領域/The Zone of Interest』物語ネタバレ
湖畔でピクニックを楽しんでいる一家の長であるルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)と妻のヘドウィグ(サンドラ・ヒュラー)は、子供達が楽しく遊んでいるのを見守っている。家族皆仲良く穏やかに遊ぶ姿を映したあと、一家は車に乗って家に戻る。
アウシュビッツ収容所の隣に住むヘス家
翌朝、息子達はヘスに目隠しをして庭に連れ出す。ヘスが目隠しを外すと家族全員が揃ってヘスにカヤックをプレゼントする。喜んだヘスは末っ子の赤子を乗せて家族達に感謝の言葉を告げたあと、家の門を出てすぐ横にあるコンクリートの巨大な門を潜り抜けて仕事に向かう。ヘスが向かった壁の向こう側からは絶え間なく銃声が鳴り響いていた。
彼の向かった門の先は、ユダヤ人を虐殺するためのアウシュビッツ収容場である。
ヘスの屋敷のすぐ横がアウシュビッツ収容所なのだ。
夫を見送ったヘドウィグは銃声を全く気にすることなく幼い娘と庭に咲く花を眺めている。
ヘドウィグは塀の外から現れたユダヤ人の囚人から衣類と缶詰を受け取ると、衣服をテーブルに並べてメイドや子供達に分け与えると(おそらく犠牲者の衣服)ヘドウィグは同じく奪ったであろう毛皮のコートを着て口紅を付け満足そうに微笑む
ヘスは建築家と上司を家に招き、彼が設計した円形の火葬炉の設計図を見せてもらう。設計士は片方で遺体を燃やし、もう片側が冷えて灰をかき出せるので、継続して遺体を燃やし続けることができますと説明すると、ヘスは満足そうに頷く。
ヘスが外に出ると、収容所の看守が集まりヘスの誕生日を祝い始める。その間、長男クラウスがナチス親衛隊の制服を着てヘスと乗馬して散歩をしていると、すぐ横では、衛兵がユダヤ人労働者を怒鳴りつける声が聞こえる。
夜、ヘスは外に出てタバコを吸いながら、収容所の火葬場が噴き出る煙と炎を見上げている。
就寝時、クラウスはベッドの中で何かを見ている。弟が何をしているのかと尋ねると、クラウスは金歯を見ていると答える。何本も見ている。弟は騒いでクラウスを困らせる。
場面が切り替わり、白黒の映像で少女がどこかのぬかるみの土にりんごの果実を埋めている。その頃、ヘスは娘たちに物語を読み聞かせている。
後日、アウシュビッツ収容所近くの駅に別の列車が到着する。兵士の顔で何も見えないが、大人子供が泣き叫び、兵士の怒号、そして銃声、悲鳴、痛み、悲惨な声が聞こえる。
ナレーションで、ナチス本部はヘスが効率的にユダヤ人を減らしていることに対し、貴重な人材だと功績を認めていると伝えている。
ヘスは二人の幼い子供を連れて湖でカヤックに乗り遊んでいると、湖の水が灰色に変わり始めたことに気がつき、急いで子供達を湖から上げる。ヘスが周辺を調べ人間の頭蓋骨の一部を掴み上げ、湖がアウシュビッツから流れ出る遺灰で汚染されている事に気がつく。
無関心、死
ヘスはオフィスで電話を受け、アウシュビッツからオラニエンブルクに異動する辞令を受ける。
ヘドウィグの母親が訪ねてくる。母親はユダヤ人を嫌っており、以前ユダヤ人女性が狙っていたカーテンを高値で買われたことを愚痴ると、ヘドウィグはにこやかに、その女性は今壁の向こう側にいると笑う。そして母親は玉の輿に乗ったヘドウィグを祝福すと、ヘドウィグは「私はアウシュビッツの女王と呼ばれているのよ!」と誇らしげに答える。
ヘドウィグと母親が美しい屋敷で穏やかに過ごし、屋敷に咲く美しい花達がクローズアップされている間、銃声、悲鳴、死の音が絶え間なく聞こえる。
その後、ヘス一家は数人の友人を招いてプール・パーティー中に、ヘスは妻に昇進と転属をの辞令について説明し、家族全員が引っ越すことになると伝えるが、ヘドウィグは激怒し反対するが、ヘスは議論する気も怒らずその場を離れる。ヘドウィグはヘスを追いかける最中、メイドを理不尽に怒鳴りつけ、収容所送りにするぞと脅す。
川を眺めるヘスを見つけたヘドウィグは、ここの優雅な生活を気に入っているため、要するに、ヘスは異動しろ、私たちはここで優雅な生活を送り続けたいため、自分たちがここに残ることがあなたの転属の条件にしろと約束させる。
ヘドウィグの母親は外のラウンジチェアで寝ていたが、煙で咳き込んで目を覚ます。彼女の目の前で収容所から立ちこめる大量の煙を目にする。
その夜、ヘドウィグの母親は眠ろうとするが、収容所の火葬場の煙突から空を照らすほど明るく燃えている炎を見つめ、収容所で何が起きているのか、娘の完璧な生活の代償があの炎だとようやく現実に気がつく。
夜、ヘスが娘達に『ヘンゼルとグレーテル』の読み聞かせをしていると、再び白黒の画面になり、収容所に忍び込んだ少女が収容所に忍び込み、囚人たちが見つけて食べられるように、囚人達の使うシャベルの死角にりんごなどの果物を置いている。
翌朝、ヘドウィグは母が夜中に誰にも告げずに出て行ったことを知り、部屋に置かれていた短いメモを見つけ、それを読むが、ヘドウィグはリビングの暖炉にメモを捨てる。怒りの治らないヘドウィグは、メイドの一人に夫に命じさせて収容所で焼いてやろうかと脅す。
ヘスは息子と最後の乗馬をし、自分の昇進と「収穫」(=可能な限り多くの死者)をもたらすためであることを説明する。
裏庭の温室で作業員が働いている。ヘドウィグがタバコを勧める。
ヘスの息子が部屋で遊んでいると、外で騒ぎ声が聞こえてくる。どうやら昨夜少女が置いて行ったりんごが原因の言い争いらしい、登場する兵士の怒声、そして銃声、その声が鳴り響く間、ヘスの庭の屋敷では、肥料としてユダヤ人達の遺灰をこれでもかと撒かれている様子を見る。
エンディングネタバレ
ヘスは新天地のオラニエンブルクに到着する。早速他のユダヤ人収容所のリーダーたちと会議を行い、ヘスはユダヤ人が毎日どれほど集まり、仕事させて、収穫=殺しているかを熱弁し出席者達から賞賛される。
ヘスの働きが評価され、彼の業績はアドルフ・アイヒマンに報告するとまで言われるが、
ヘスはここのところ精神的に不安定になり、体は正常だが気分が悪く、眠れない日々を過ごしている。
その後、ヘスは高級将校たちが集まるパーティに出席するが、ヘスはどうにもこの場所に馴染むことができずにいた。
その夜遅く、ヘスはヘドウィグに電話をかけてハンガリーのユダヤ人を根絶やしにする新しい作戦が、自分の名前にちなんで命名されたことを告げる。ヘドウィグはパーティーの様子を聞きたがるも、ヘスは彼らをいかにガスで殺すかしか考えていなかったと返答され、彼の様子がおかしいと感じたヘドウィグは電話を早々に切り上げる。
電話を終えたヘスはオフィスを出て階段を下り始めたが、何度も吐き気に襲われ、薄暗い廊下を見つめる。
現代、
アウシュビッツ博物館を掃除しに複数の掃除婦が現れ、床のモップをかけたり、掃除機をかけたり、焼却炉を掃除していく、その背後には展示コーナーが続き、ここで殺されたユダヤ人達が履いていた大量の靴、衣服、そして主人のいなくなった鞄、最後に犠牲になった人たちの写真が飾られている。
ナチスが消し去ろうとしたものを、世界は今、維持している。その行為の恐怖は、世界が記憶し続けるために、残されなければならない。
再び過去、
吐き気が治ったヘスは真っ暗な階段を下りていく。
映画はここで終了する。
映画『関心領域/The Zone of Interest』海外の反応評価まとめ
IMDb 7.6/10
9/10
寒気がした
映画『関心領域/The Zone of Interest』は私に大きな戦慄を与えた。
この映画の感想をどう表現したらいいのかわからない。
ホロコーストを題材にした物語で、まだ見たことのないようなものを見せることは不可能だと思っていたが、ジョナサン・グレイザーはこの映画でそれをやってのけた。
この映画の原作であるマーティン・エイミスの小説を読もうとし、ほとんど最後まで読んだが、残り50ページほどで手を引いた。最後のひと踏ん張りができなかった。しかし、この映画が非常にゆるい脚色であることは、十分に読んだ。というより、グレイザーが大まかなアイデアを得て、そこから自分の物語を作ったという感じだ。
この映画を観る少し前に『All the Light We Cannot See(原題)』を観たばかりだったが、あのシリーズではナチスがみんな漫画のような悪役として描かれていて、とてもイライラした。どのナチスも、たまたまその場に居合わせた人を恐怖に陥れながら独白する、グロい怪物だった。
私の問題は、そのせいでナチスが、自分たちのやっていることが歴史の正しい側面であるかのように洗脳された普通の人たちではなく、異常な人たちのように見えてしまうことだ。しかし、映画『関心領域/The Zone of Interest』では、グレイザーは正反対のことをやっている。この作品に登場するナチスは、庭の手入れをしたり、夫婦げんかをしたり、子供たちと川で水浴びをしたりする、平凡な普通の人々である。たまたま彼らの裏庭の外では、毎日大量殺人が行われている。悲鳴や銃声、列車が虐殺される人々を運んでくる音は聞こえるが、それを目にすることはない。この映画は最も平凡な種類の悪を描いている。
クリスチャン・フリーデルとサンドラ・ヒュラーは、アウシュビッツの司令官と甘やかされて育った妻をセンセーショナルに演じている。この映画では、観客の全神経を集中させることが要求される。というのも、スクリーン上で起こっている最も重要なことが、背景やフレームの隅で起こっていることが多いからだ。火葬場の煙が遠くを漂っているのが見えたり、ナチスが自慢の花畑を徘徊しているときに、ぼんやりと灰が漂っているのが見えたりする。
映画の最後の瞬間には、司令官の良心とでもいうべきものが垣間見える。彼が映画の他の部分を通して見えるほど、自分のしていることにまったく無関心ではないのかもしれないというヒントだ。呪われた映画を締めくくる、呪われたシーンだ。
そして、この映画のメイキングを読むと、よりいっそう印象深くなると言っていい。強制収容所の壁の向こう側で起こっていることはすべて、グリーンスクリーンに投影された視覚効果なのだ。このような特殊効果には本当に感心させられる。
点:A.
6/10
インパクトはあるが、引き込まれる
映画『関心領域/The Zone of Interest』はホロコーストにユニークな角度からアプローチしている。確かに、私がこれまで映画で見たことのない角度だ。この異なるアプローチは、ホロコーストの悪を新しく恐ろしい方法で縁取る、実に不吉な質を映画に与えている。
このアプローチは、峻厳な並置によって達成されている。ホス一家の比較的平凡で平凡な家庭の営みと、彼らの庭の壁のすぐ向こうで起こっているまったく恐ろしい悲劇とを比較するのだ。こうすることで、この映画は生々しすぎたり、顔に泥を塗るような作品にはなっていない。
その代わり、暴力と悪は主に耳に入るだけで、目にすることはない。このような形で、この映画は存在感を示している。このような悲劇と恐怖を、この一家とゲストが無視すること。庭の壁越しの大量殺人を常態化させること。口が達者で平然としていること。
そこに恐怖がある。
ホロコーストの恐怖を描くには非常に効果的な方法だが、この映画にはストーリーテリングのメリットがないように思う。筋書きがないため、この映画が言いたいことが伝わると、この邪悪な登場人物や恐ろしい出来事に長く付き合わないために、早く終わってほしいと思いがちだ。
というのも、この映画は間違いなく語る価値のある物語だと思うからだ。このような角度からホロコーストを見ることで、それがある種の人々にとっていかに常態化したかを理解することは、反省すべき重要なことだが、これを伝えるために長編映画が必要だったかどうかはわからない。
しかし、長編映画でそれを伝える必要があったのかどうかはわからない。全体として、私はこの映画がやっていること、そしてそのアングルを高く評価する。この並置を作り出し、このポイントを掘り下げた演出は一級品だが、核となるメッセージ以外には、この映画にはのめり込むものがない。筋書きもない。理解したくなるような登場人物もいなければ、心を通わせたくなるような人物もいない。 その結果、映画として拡張しすぎた感があるが、それでもメッセージは届いている。
9/10
アウシュビッツ近郊の生活、ひそやかに語られる
ホロコーストの真っただ中、アウシュヴィッツの強制収容所のすぐ隣にある豪華な家で、ナチスの司令官ルドルフ・ホスの家族が享受していた牧歌的な生活を描いた白熱の映画。
サウンドトラックはほとんどなく、ジョナサン・グレイザーのスローバーンで不穏な作風にふさわしく、すべてが慎重なペースで展開する。終始、厳格な秩序と冷静さが蔓延している。
ホロコーストがすぐ隣で行われているにもかかわらず、私たちは実際にホロコーストを目にすることはない。蛮行と屠殺は、遠くで聞こえる悲鳴や、夜の火事や昼間の煙からしかわからない。この家族の原始的で緑豊かな環境は、すぐ近くで行われている大量絶滅とは裏腹である。想像力に委ねることで、恐ろしい出来事を伝える見事な作品だ。
本作の字幕は時々早口なので、繰り返し見ることが役に立つかもしれない。しかし全体として、これは最初から最後まで記憶に残る並外れた映画である。例外なく、すべての人にお勧めできる。
5/10
かなり複雑な経験
映画『関心領域/The Zone of Interest』というトピックのせいで、この映画は自動的に批評家から多くの賞賛を受ける。
しかし、注意してほしい–強力なストーリーやプロットを期待すると、あまり得られないだろう。確かに、ある意味でホロコーストというテーマに対するこの映画のアプローチは示唆に富んでいるが、長編映画としては単純に物足りない。
力強い絵やシーンはいくつかあるが、家族やスタッフが日常生活を送っている様子を観察するだけでは、(少なくとも私は)今のところ人の注意を引きつけることはできない。
他には?プロダクションとキャストは、テレビ映画の規模ではしっかりしている。
映画『関心領域/The Zone of Interest』は『縞模様のパジャマの少年』を思い出させるが、後者の方がはるかにサスペンスフルで面白い(シリアスなテーマにもかかわらず)。最終的には、面白い試みではあるが、インパクトを残すには十分ではなかった。
8/10
この作品に出会えて本当に良かった。
母親と兄弟である子供たちがいる、見た目も雰囲気も普通の家がある。
父親は死の指揮官であり、彼らの息を引き取る責任を負っているが、彼はそれを気にすることなく生きている。
結局のところ、人類という種族を絶滅させ、罪悪感も緊張も争いもなく、大きな塀に囲まれた家で隠れるように普通の生活を送るには、それなりの心構えが必要なのだ。
メタスコア 92/100
ロッテントマト 批評93/一般78
まとめと感想
いかがでしたか?
映画『関心領域/The Zone of Interest』を見た海外の反応評価とネタバレを紹介しました。
アウシュビッツを題材にした作品、内部ではなく、外部、しかもすぐ隣に住むとある裕福な将校一家をドキュメンタリー風に描いています。彼らは裕福で何不自由なく子供達も笑って遊んでいるが、絶対に映し出すことはないが、塀のすぐ横では誰かが殺され続けている。
ユダヤ人の断末魔の叫びが、彼らにはBGMかのように耳から耳へと素通りしているのか、笑顔を絶やすことなく幸せそうに映し出されている。
正直言ってあまり面白い作品ではない。
芸術性が強い作品であり、物語性やエンタメ性などについてはかなり抑え目で物足りなさは残る。
救いがあったのはヘドウィグの母が娘が何をして裕福な暮らしをしているのか気づいたこと、そしてヘスが良心の呵責に苛まれているシーンがあったこと。
白黒のシーンで少女が塀の向こうにいる仲間達のためにりんごを土に埋めるシーン、最初は意味がわからなかったが、家族あるいは恋人のため、死の危険を顧みずに単身収容所で命をかけて仲間達に食糧を渡していたことに気がつき鳥肌が立った。ミッドサマーみたいに謎の映像で我々を困惑させようとしているのかと身構えてしまったことに少し恥ずかしさを覚えた。なぜあのような映像にしたのかは不明だが、確かに印象に残ったシーンではある。
日本人にはグッとくるものがないように思える。この映画の題材のようにアウシュビッツ収容所で起きたことなんて、遠い国の”どこか”で起きたであろう”歴史の一部”でしかないからだ。
海外レビューでゾッとした表現があった。
”我々はアウシュビッツに向かった人のことばかり感心しているが、生きて出ていった彼らのことについては無関心だ”
結局そうなのだ。
この映画をみて何か感慨深いものをかんじたとしても、結局は映像越しのものであり、一時的に駄菓子を食べて喜んでいるのと何ら変わりはなく、タイトル通り私たちの関心領域なんてその程度でしかないのだ。
映画としては興味深いが、皆のレビュー通り私も6点って感じ。
凄まじい胸にくる映像美があるわけでも、衝撃的な内容であることもなく、淡々とドキュメンタリー映像を見せつけられるだけに感じてしまった。
2024年アメリカ公開映画
ネタバレ↓