映画『The Holdovers』物語ネタバレと海外の感想評価

映画『The Holdovers』作品情報

• 映画のタイトル: The Holdovers
• 監督: Alexander Payne
• 公開年: 2023年
• 上映時間: 133分
• ジャンル: コメディドラマ
• 制作国: アメリカ合衆国
• 主なキャスト: ポール・ジアマッティ、ダヴィーン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ
• 特徴と評価: メタスコア82/100。感動的で心温まるストーリー、印象的な演技。興行収入は$15.9 million。

映画の主要な受賞歴:

• トロント国際映画祭: People’s Choice Award Runner-up
• ハートランド国際映画祭: Pioneering Spirit: Rising Star Award（ドミニク・セッサ）
• その他: 複数の映画祭での上映と高評価

ストーリー概要:

『The Holdovers』は、1970年のニューイングランドの寄宿学校を舞台にした物語です。

学校で最も気難しい歴史教師ポール・ハンハム（ポール・ジアマッティ）が、クリスマス休暇中に家に帰れない数人の学生たちの監督を任されます。孤独な教師、問題を抱える生徒アンガス（ドミニク・セッサ）、そしてベトナム戦争で息子を失った学校の料理長メアリー・ラム（ダヴィーン・ジョイ・ランドルフ）の間に芽生える友情とそれぞれの成長を描いています。

主要キャラクターの紹介:

• ポール・ハンハム（ポール・ジアマッティ）: 閉ざされた心を持つ歴史教師。彼は彼の過去と現在の孤独と向き合いながら、意外な友情を育みます。
• アンガス・タリー（ドミニク・セッサ）: 問題を抱える生徒。彼はポールとの関係を通じて、自分自身と向き合うことを学びます。
• メアリー・ラム（ダヴィーン・ジョイ・ランドルフ）: 学校の料理長であり、悲しみを抱える母親。彼女はポールとアンガスに影響を与え、彼らの成長を助けます。

監督アレクサンダー・ペインの紹介:

アレクサンダー・ペインの経歴と作品:

アレクサンダー・ペインは、リアリズムとユーモアを巧みに融合させる手法で知られるアメリカの映画監督です。ネブラスカ州オマハ出身のペインは、彼のルーツを映し出すように、しばしばアメリカ中西部を舞台にした作品を制作しています。

彼の映画は、深みのあるキャラクター描写と社会的な洞察で評価されており、『Sideways』（2004年）、『The Descendants』（2011年）、『Nebraska』（2013年）などの作品で知られています。これらの映画では、一見平凡な人々の生活を通じて、人間関係の複雑さや人生のアイロニーを描いています。特に『Sideways』は、中年の危機を迎えた二人の男性の心情を描き、深い共感を呼びました。

『The Holdovers』でのアプローチ:

『The Holdovers』では、ペインは彼の得意とするユーモアと人間ドラマを融合させ、1970年代のニューイングランドを舞台にした感動的な物語を描いています。この作品では、彼の特徴的なスタイルが色濃く反映されており、観客に深い感動を与えるとともに、彼の映画制作における独自性を改めて証明しています。

主演ポール・ジアマッティの紹介:

ポール・ジアマッティは、その独特の演技スタイルと深いキャラクター造形で広く称賛されているアメリカの俳優です。彼は、多岐にわたるジャンルの映画で幅広い役柄を演じ分ける能力を持ち合わせています。

ジアマッティの代表作には、『American Splendor』（2003年）での漫画家ハーヴェイ・ピーカー役や、『Sideways』（2004年）での鬱屈した作家役があります。また、『Cinderella Man』（2005年）での役柄ではアカデミー賞のノミネートを受け、彼の演技の深さを証明しました。彼はキャラクターに深い人間性を吹き込むことで、観客に強い印象を残すことができる俳優です。

『The Holdovers』での役割:

『The Holdovers』では、ジアマッティは寄宿学校の歴史教師ポール・ハンハム役を演じています。この役では、彼の悩み多き中年男性としての演技力が光ります。彼の演じるハンハムは、孤独と過去の重圧に苦しみながらも、生徒たちとの交流を通じて自身の人生を見つめ直す過程を描いています。ジアマッティの繊細かつ力強い演技は、この映画の感動的な要素を一層引き立てています。

映画の評価（ネタバレなし）

1. IMDbレビュー (darkreignn29): 「『The Holdovers』は、クリスマステーマの心温まるドラマ。ポール・ジアマッティの演技が際立ち、映画はユーモアと感動のバランスが絶妙。おそらく今年の最高の映画の一つ。」
2. メタスコア評価 (Variety – Peter Debruge): 「階級、人種、悲しみと恨みに関する映画。『The Holdovers』は、昔のような良質な映画がもう作られないという一般的な苦情に対する稀有な例外。」
3. IMDbレビュー (jjgonzalez-06426): 「『The Holdovers』は、ペインとジアマッティの以前の作品『Sideways』に続く、笑いと悲しみが混在した作品。ランドルフの演技は特に印象的で、最優秀助演女優賞候補に相応しい。」
4. メタスコア評価 (The Guardian – Benjamin Lee): 「演技と映画全体に感じられる感情的な抑制が特徴的。ラストアクトでの砂糖のような甘さも、その時点ではもう正当に感じられる。」

映画タイトルの意味と象徴性:

• タイトルの意味: 「The Holdovers」は、クリスマス休暇中に家に帰れない生徒たちを指し、彼らの孤独と成長を象徴しています。
• 映画内での扱い: 映画内では、このタイトルは彼らが直面する孤独感と、共に過ごす時間を通じて築かれる絆の重要性を強調しています。

映画『The Holdovers』物語ネタバレ

1970年代の名門バートン・アカデミー、クリスマスホリデー間近。

辛口で辛辣なポール・ハンハム（ポール・ジアマッティ）は、上司のハーディ・ウッドラップ博士（アンドリュー・ガーマン）から苦言を言われていた。ポールが彼の受け持つ上院議員の息子にDマイナスを付け落第させようとしている件である。ポールは議員の息子はバカだったので落第は正しいと主張する。さらに創設者の理念である「人格者を育てる」ためにはしっかりと決断していかなければならない。とも。
しかしウッドラップは校長になって学校の経営がこんなに大変だとは思っていなかったこと、そのためには議員の援助が必要なので最低でもCマイナスをつけて欲しいと言われるが、彼は拒否する。

バートンの生徒の中には、問題児のアンガス・タリー（ドミニク・セッサ）がいた。彼はポールのクラスでB＋を取った優秀な生徒でもある。

帰れない問題児たち

ホリデー当日、学校の礼拝堂に生徒と教師が集まり日曜礼拝を行う。そこでは、学校の給食係のメアリー（ダバイン・ジョイ・ランドルフ）の亡くなった息子、カーティス・ラムの追悼が行われていた。

休暇に入り、生徒の大半が帰宅する。アンガスも帰り支度をしていたが、突然母親のジュディ（ジリアン・ヴィグマン）から電話が入り、新しい夫のスタンリー（テイト・ドノヴァン）と新婚旅行に行くからシーズンは学校にいて欲しいと告げられる。

今年、学校に残り休暇を過ごすのは、アンガスの他に、テディ・カウンゼ（ブレイディ・ヘプナー）、ジェイソン・スミス（マイケル・プロヴォスト）、アレックス・オラーマン（イアン・ドリー）、イェジュン・パク（ジム・カプラン）。彼らはポールとメアリーが寮の管理人となり寮で過ごすことになる。

皆で過ごす初日、早速アンガスとカウンゼは、カウンゼがアンガスの写真を盗んだことで二人は喧嘩になる。カウンゼは金持ちの息子のボンボンだが、今年は家のリフォームのため家に帰れないと言われていたことを、アンガスは冬にリフォームなんてするはずはない、お前は家のお荷物なんだと挑発し返したため、二人は殴り合いになってしまう。ポールが現れアレックスが喧嘩の理由を密告し、ポールは彼に掃除の罰則を与え、離れた場所での食事を命じる。夕食中、カウンゼがメアリーと料理について失礼な発言をしてポールが激怒する。お前に彼女の何がわかるのだと怒った後、彼女の息子カーティスは大学進学のために入隊しベトナム戦争で戦死したことを話す。

ポールは軍隊の鬼教官のように早朝から子供達を叩き起こすと、早朝のランニングなどトレーニング、そして勉強など厳しい日課を始める。休憩中、カウンゼがアレックスに告げ口をしたことをいじめ、彼の手袋を川に投げ飛ばしアレックスを泣かせる。夜、イェジュンはホームシックで泣いていた。

アンガスとポール

翌日、ポールは少年たちの両親に連絡し、アンガス以外は家に連れて帰ることになる。その日からアンガスは皆が寝静まった夜になると、鍵を盗み出し好き放題する。翌朝、ポールは彼なりにアンガスのためにクッキーを用意するが、彼にとってこの深い悲しみを癒すことにはならず、アンガスはポールに怒鳴りつけ出ていきたいことを伝え、走って逃げ出す。しばらく追いかけっこを続けたアンガスは、体育館にたどり着くとポールの静止を無視してマットに一回転して飛び込むと…アンガスは肩を脱臼して泣き叫ぶ。

ポールは泣き叫ぶアンガスを連れて病院に急ぐ。車中でポールは、上司のウッドラップにバレるとやばいから、私の責任ではないこと、自分で飛び込んだと言えと叫ぶと、アンガスは俺の保護者ならちゃんとしろよ！と醜い言い争いをして病院に到着する。アンガスは言われた通り、氷で滑ったと伝え激痛の治療を受ける。

その後、ポールはアンガスをダイナーに連れて行き、そこでウェイトレスの副業をしている教師リディア・クレイン（キャリー・プレストン）と出会う。食後、アンガスはピンボールマシンで遊ぼうとしたところ、男性二人の機嫌を損ねてしまい、喧嘩になりそうになるが、ポールが二人にビールをおごるからと言って場を収めることに成功する。帰り道、アンガスはポールが彼らを簡単に許しすぎではないかと伝えるが、彼らはベトナム戦争帰りだから敬意を持つべきだとアンガスに伝える。

後日、リディアの自宅で行われるクリスマスパーティに誘われた、ポール、アンガス、メアリーの三人でパーティに参加する。会場でアンガスはリディアの姪のエリーズ（ダービー・リー＝スタック）を紹介され、二人は意気投合し、子供たちと飾り付けの手伝いをしているうちにキスを交わす。ポールは片思いだったリディアと仲良くなりたいと思っていたが、遅れてリディアの彼氏が現れ、露骨にガッカリする。

実父に会いに

飲み過ぎたメアリーはカーティスのことを思い出し泣き出したため、ポールとアンガスは彼女を外に連れ出す。外で不機嫌なポールはイライラをアンガスにぶつけ彼の親について暴言を吐いてしまい、アンガスは無言で立ち去る。その一部始終を見ていたメアリーにクリスマスに置き去りにされた子供に言うべき言葉ではないよと説教されてしまう。

クリスマスの日、食事中、メアリーの妊娠中の妹がいるボストンに三人で行き、休暇を過ごすことになる。メアリーは妹夫婦とゆっくり過ごす間、ポールとアンガスはボストンを旅し、ポールの性生活などの話題で二人の距離は縮まり、意気投合した二人はその後美術館を巡ったり、スケート場に行ったり冗談を言い合いながら、ボストンを充実して過ごす。

翌日、ポールはアンガスがタクシーでこっそり外出するのを見かけ、行き先を聞くと実父に会いに行くつもりだと言う。ポールは墓地に行くのだと思い、それに付き合うとたどり着いたのは精神病棟でだった。実はアンガスの父トーマス（スティーヴン・ソーン）は施設に入所していたのだ。アンガスは父を訪ね、学校であったこと、楽しかったこと、いつか一緒に住みたいことを伝えるが、父は食事の中に薬を入れられていることと答えるだけだったため、アンガスはがっかりして立ち去る。

エンディングネタバレ「ポールの決断」

ポールに夕食に連れていかれたアンガスは、自分が父親のようになってしまうのではないかという不安と、母親が新しい夫の前でアンガスがあのようになってしまうのを恐れ、アンガスを学校に閉じ込めているのだと考えを話す。話を聞き入れたポールは、君は厄介者だが、優秀な若者であり、両親のどちらにも似ていないと述べる。

ポール、アンガス、メアリーはその後バートンに戻り、親子のように新年を祝う。

休暇開け、ジュディとスタンリーが学校を訪れ、ウッドラップのオフィスに呼ばれ、休暇中に親に連絡を与えずボストンに向かった”遠足 “のこと、そしてアンガスがトーマスを訪ねた件について問い詰められる。ジュディは息子がポールをそそのかしたのだろうと彼に非があるのだとポールに言わせようとする。どうやら二人にとって実際のところ邪魔者で、ジュディは彼の反抗期に疲れていること、スタンリーは退学させて入隊させる計画を話してくる。

これを聞いたポールはアンガスをかばい、旅行は私のアイデアで、アンガスに父親と話すよう勧めたのだと、全て自分に責任があるのだと堂々と伝える。結果、ポールは解雇されるが、アンガスは退学を免れる。

ポールは荷物をまとめ、メアリーから白紙の本を手渡され別れの挨拶をしたあと、彼に会いにきたアンガスに対し、最後のアドバイスを伝えると強く握手を交わし、ポールはバートンから永遠に立ち去る。

映画『The Holdovers』海外の感想評価

IMDb 8.1/10

1. 新しいカルトクラシック – 9/10
   「『The Holdovers』は、笑いと深い感情が絶妙に混ざり合った素晴らしい作品です。特にダヴィーン・ジョイ・ランドルフの演技には心を打たれました。映画全体が心温まるストーリーで、暗い部分と感情の重さがありながらも、今年の最も心に残る映画の一つと言えます。ランドルフの演技が印象的で、特に彼女の演技に対して最優秀助演女優賞を期待しています。」
2. アレクサンダー・ペインの見事な帰還 – 10/10
   「『The Holdovers』は、1970年代の映画を思わせる雰囲気を持つ映画です。ペイン監督とジアマッティのコンビが再び素晴らしい作品を生み出しました。この映画は、寄宿学校で過ごす教師と生徒の複雑な関係を描いています。特にジアマッティの演技が際立っており、彼のキャラクターの成長と変化が見事に描かれています。」
3. 今年のベストムービーの一つ – 9/10
   「『The Holdovers』は、クリスマスをテーマにした感動的な映画で、ジアマッティの演技が際立っています。彼が演じる教師のキャラクターは、孤独と対立を乗り越えて成長していく様子が描かれており、視聴者に深い印象を残します。映画はユーモアとドラマのバランスが絶妙で、特にジアマッティの演技が光っています。」
4. クリスマスのための定番 – 10/10
   「寄宿学校がほぼ全員のスタッフと生徒がクリスマスの休暇で家に帰るとき、ポール・ハンハム（ポール・ジアマッティ）は学校に残ることを余儀なくされます。彼と問題を抱える生徒アンガスとの関係は、映画の中心を成しています。映画は人間の弱さと成長をリアルに描き出し、視聴者に深い印象を残します。」
5. ノスタルジックなフィルムメイキング – 8/10
   「1970年代の映画のような感覚を持つ『The Holdovers』は、クリスマス休暇中に寄宿学校に残された教師と生徒の心の葛藤を描いています。ジアマッティの演じるハンハム教師は、孤独と対立を乗り越えて成長していく姿が感動的です。映画は人間の弱さと成長をリアルに描き出し、視聴者に深い印象を残します。」

メタスコア82

1. Variety – Peter Debruge 点数: 100 『The Holdovers』は階級、人種、悲しみ、恨み、機会、権利に関する映画です。これは、もう昔のようには作られないとよく言われる映画に対する稀な例外です。
2. Slashfilm – Barry Levitt 点数: 95 『The Holdovers』は、私たちが画面上でより多くの思慮深く、研究された、愛情深く、抗しがたい人間の物語を必要としていることの証明です。しかし、アレクサンダー・ペインが舵を取るときは、それが助けになることは間違いありません。
3. Entertainment Weekly – Maureen Lee Lenker 点数: 91 人生は乱雑で、『The Holdovers』はその真実を決して見失うことはありません。しかし、映画自体が自己陶酔的になることもありません。
4. Collider – Ross Bonaime 点数: 91 『The Holdovers』は、私たちを驚かせ続けることができる優れた監督からの素晴らしい発見です。
5. The Guardian – Benjamin Lee 点数: 80 演技とそれを取り巻く映画の両方に感情的な抑制があります。年の時期にもかかわらず、最後の幕で少しの甘さが登場するとき、それは稼いだものと感じられます。

まとめと感想「何かを始める前に観て欲しい」

なぜ彼は不機嫌で厳格なのか？彼はなぜ優秀なのに不機嫌でわがままで子供なのか？彼女はなぜ息子を亡くし酒浸りなのか？

人はそれぞれ様々な想いを持ち、驚くほど大いなる悩みと葛藤を繰り返して生きている。ポールは一人の問題児との出会いを機に、自身の人生を振り返りながら一歩だけ変化を始める物語。

静かでシンプルで悲しくて嬉しい。ポールは悲観的に離れるのではないだろう、きっと夢に向かって歩み始めたのだ。優秀な生徒を守るために行なった彼の行動は神は見ているだろうし、彼の行き先は明るく祝福されているだろう。

何かしたい、何か動きたくなる。これは良い映画。