もくじ
映画『NOCEBO ノセボ』の基本情報
- タイトル: NOCEBO ノセボ (2022)
- ジャンル: 心理スリラー
- 制作国: アイルランド、フィリピン
- 上映日:
- アメリカ: 2022年11月22日
- フィリピン: 2023年1月18日
- 上映時間: 96分
- 興行収入: $142,918 (世界)
- メタスコア評価: 58/100
- 監督: ロルカン・フィネガン
- 主要キャスト:
- エヴァ・グリーン (クリスティーン役)
- マーク・ストロング (フェリックス役)
- チャイ・フォナシエ (ダイアナ役)
ストーリー概要(ネタバレなし)
ファッションデザイナーのクリスティンは、不可解な病に苦しみます。突然訪問したフィリピン人の介護者ダイアナの、彼女の伝統的な民間療法によって徐々に快方に向かいますが、恐怖の真実を暴くことに。
主要キャラクター紹介
- クリスティーン: モード業界で働く主人公。神秘的な病に悩まされる。
- フェリックス: クリスティーンの夫で、彼女の状況に挫折感を抱く。
- ダイアナ: フィリピン人の介護者。伝統的な治療法を用いる。
視聴者の反応と評価
『NOCEBO ノセボ』はIMDbで肯定的な評価を多数獲得。一部では予想外の展開や演技が評価されているが、一方で予測可能なプロットやホラー要素の不足を指摘する声も。
ネタバレの後に具体的なレビューを紹介しています。
映画タイトルの意味
“Nocebo”は、否定的な期待によって引き起こされる害のことを指し、映画のテーマと密接に関連しています。
映画『NOCEBO ノセボ』物語ネタバレ
子供服のファッションデザイナーとして大成功しているクリスティン(エヴァ・グリーン)は夫フェリックス(マーク・ストロング)と娘ボブス(ビリー・ガズドン)と平和に暮らしていますが、多忙な日々を過ごしています。ある日、ファッションショーを終え電話を受けていると、ダニだらけの汚れた犬が近づき、彼女にダニをまき散らした後、姿を消します。クリスティンは驚いて顔を背けますが、1匹のダニが彼女のうなじに付着したところから物語は始まります。
謎の家政婦ダイアナ
その後ダニに噛まれた場所が赤く腫れ上がり、クリスティンは夜も眠れず呼吸器を装着し、常に薬を服用しないとまともな生活が送れないほどに衰弱していきます。クリスティンが雇った家政婦だと名乗るアジア系の女性ダイアナ(チャイ・フォナシエ)が現れ家に招き入れます。
ダイアナはスーツケースを開けると、ただの家政婦とは思えないような、誰かの遺品と怪しい民間魔術の材料を出し、床を這っていたクリスティンの病気の原因となったダニを見つけます。ダイアナは慣れた手つきでマッチ箱のなかにダニを呼び捕らえるとスーツケースの中にしまうのでした。そして部屋の暖炉に祭壇を作ると、その灰を使って目に見えない子供の霊と交信する儀式を行うのでした。
帰宅したフェリックスとホブスはダイアナの突然の来訪に不信感を抱いています。しかし、夕食中、クリスティンが突然腕に痛みを覚え倒れ込むと。ダイアナが助けに来て、クリスティンの腕に手をかざすと不思議なことに彼女の痛みが消え去るのでした。
民間療法と不信感を募らせる夫
クリスティンはダイアナを信じ、見た目は怪しいアジアの魔術的な治療を開始します。すると今までの苦しみが嘘だったようにクリスティンは体調が良くなり、涙を流して喜分のでした。するとダイアナは自身の過去について話し始めます。自分には超自然的な力が備わっていること、幼い頃、死後その力を譲り渡す相手を探していた魔術師の老婆オンゴ(アンジー・フェロ)から譲り受けたものだと説明します。
その方法とは、老婆の口から出た黒いひよこを飲み込むというものでした。ダイアナはその後、魔術を使って人々を癒していましたが、魔女とみなされ、社会から疎外されるようになったため国を出たのだと説明するのでした。
治療は続き、クリスティンは体調が良くなり始め、徐々に自宅で仕事を始めていきますが、その様子を見ているダイアナは苦虫を噛むように、苦しい表情を浮かべています。
フェリックスは妻のクリスティンの体調が良くなっていくにも関わらずダイアナへの警戒をし続けています。というのも、治療を開始して体調が良くなっていきますが、クリスティンは定期的に幻覚に悩まされていくようになったからでした。
苛立った彼はクリスティンが眠った後、ダイアナの部屋を訪れるとクリスティンに近づくなと命じます。しかし、ダイアナは反抗的な笑みを浮かべると、”階段に気をつけてください”と予言をして部屋から追い出します。納得いかないフェリックスが部屋から出ると、ボブスが飼っているインコに襲われ、驚いたフェリックスは手でインコを払い落としますが、インコは死んでしまうのでした。
彼女はなぜこの家に来たのか?
翌朝、ダイアナがボブスと一緒に死んだ鳥を埋めながら絆を深める中、フェリックスはこっそりとダイアナの部屋を探索します。暖炉に築かれた祭壇、家族の写真、そして赤黒い気味の悪い瓶を見て、ダイアナこそがこの家に不幸を招いた黒幕の原因だと思うようになるのでした。
仕事から復帰した、クリスティンが帰宅すると、フェリックスがダイニングテーブルに大量の薬を置いて、行方不明になったと言っていた薬がダイアナの部屋に隠されていたと伝え、ボブスと一緒に帰宅したダイアナに、解雇を告げるのでした。部屋で荷造りをしている最中のダイアナはマッチ箱を開けると、ダイアナの寝室にダニを一匹放ちます。
その日の夜、ダイアナは巨大なダニに襲われ、傍に座る黒い犬の悪夢を見ます。
翌日、ボブスはクリスティンに、お父さんがダイアナに罪を着せるために薬を部屋に隠していた、と伝え、クリスティンとフェリックスは大喧嘩になります。フェリックスは家族のためだと主張しますが、彼女が立ち去った後再び症状が悪化したクリスティンは納得することができませんでした。
喧嘩の後、フェリックスが2階にいると、ボブスのペットに似たインコに襲われ驚いた拍子に階段の上から落ちて大怪我を負い入院します。体調が悪化したクリスティンは効かない薬の服用を開始、仕事に復帰しますが、撮影中に幻覚を見て悪化してしまいます。家で寝込んでいるとダイアナが家を訪れたため、再びダイアナに助けを求めるのでした。
エンディングネタバレ「彼女の真意」
ダイアナはクリスティンのために最後の儀式を始めます。儀式の最中、ダイアナは突然”私はクリスティンを治しているのではなく、罰している”と明かします。
そしてクリスティンは、ダイアナが夫と娘と幸せに暮らしていたフィリピンでの生活がフラッシュバックします。かつてフィリピンに住んでいたダイアナは、クリスティンが衣料品ラインを生産するために使っていた、安い賃金で働かせる奴隷のような扱いで縫製作業をさせる工場に、1日だけ娘を連れて行きます。ダイアナが懸命に働く間、ミシンの下で健気に待つ娘と一緒に頑張って働いていると、視察に来たクリスティンが従業員を酷使し、盗難を防ぐために出口に鍵をかけるよう管理者に進言して立ち去ります。しかし、締め切られた猛暑の中で故障した扇風機が火花を散らし、工場は一瞬で火の海となります。
娘の飲み物を買うため、たまたま外にいたダイアナは、その様子を見ていることしかできず、中にいた従業員と娘は鍵を閉められた扉から出ることができず全員焼け死んでしまいます。
その後、娘の亡骸を前に、クリスティンを恨み、犬の亡霊を送ってダニと血の呪いをかけたことを伝えます。いつの間にかクリスティンの周囲は火の海となり、ダイアナに許しを請いますが、ダイアナは彼女をダニ呼ばわりしたあと、クリスティンの目の前に火傷した状態の娘を連れていき彼女に火傷を体感させます。
ダイアナはボブスに庭で待つように伝え、言うとおりにしたボブスの目の前で、彼女は屋根に登り、目の前で飛び降り自殺をします。すると、ダイアナの口から黒いヒヨコが出て、ボブスの中に入り、彼女はオンゴになるのでした。
フェリックスが戻り、クリスティンの部屋に入ると、そこにはミシンを踏んだ状態で焼け死んでいる、クリスティンの焼死体が残されているのでした。
故郷、娘を失い、ダイアナの帰りを待つ夫の前に、ダイアナの魂が現れ、別れを告げた後立ち去ります。
ダイアナの亡霊に遠くから見守られながら、森の中でひとりハーブを集める幼い魔術師となったボブスの姿を描いて物語は終了します。
監督ロルカン・フィネガンの紹介
ロルカン・フィネガンは、『Vivarium』(2019)、『Without Name』(2016)で知られる監督。独特の視点と緊張感あふれる演出が特徴。
ロルカン・フィネガンは、アイルランド出身の映画監督で、独特の視点とサスペンスに満ちた演出で知られています。彼の作品は、緊張感あふれる物語と深い心理描写が特徴で、映画愛好家の間で高く評価されています。
代表作
- 『Vivarium』(2019): この映画では、一組のカップルが理想的な郊外の住宅地に迷い込む様子を描いています。不気味で予測不可能な展開が、観客を引きつけます。この作品は、そのオリジナリティとスタイルで、批評家からの注目を集めました。
- 『Without Name』(2016): アイルランドの森の中で起こる超自然的な出来事を描いたこの作品は、その神秘的な雰囲気と強烈なイメージで知られています。この映画は、自然と人間の関係、そして未知への恐れを探求しています。
- 『Foxes』(2011): この短編映画では、一組の若いカップルが荒廃した郊外地域での生活と孤独に直面する様子を描いています。映画は、日常生活の中に潜む不安と疎外感を巧みに表現しています。
主演エヴァ・グリーンの紹介
エヴァ・グリーンは、『カジノ・ロワイヤル』(2006)、『ペニー・ドレッドフル』(2014–2016)で知られるフランス出身の女優。深みのある演技で知られる。
エヴァ・グリーンは、深く印象的な演技と独特の魅力で知られるフランス出身の女優です。彼女は、観客を引き込む強烈なスクリーンプレゼンスと、複雑なキャラクターを巧みに演じる能力で高く評価されています。
経歴と代表作
『カジノ・ロワイヤル』(2006): ジェームズ・ボンドシリーズの中で、ヴェスパー・リンド役を演じ、国際的な名声を獲得しました。彼女のパフォーマンスは、感情的な深みと強さを備え、批評家から高く評価されました。
『ペニー・ドレッドフル』(2014–2016): このテレビシリーズでの彼女の演技は、その複雑さと感情的な範囲で注目を集めました。彼女は主人公ヴァネッサ・アイヴスを演じ、ダークで魅惑的な世界を見事に表現しました。
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(2016): ティム・バートン監督のこの映画では、主人公ミス・ペレグリンを演じ、そのユニークなビジュアルとキャラクター作りで観客を魅了しました。
演技スタイル
エヴァ・グリーンは、その神秘的で、時にダークな魅力と、感情的な深さを持ったキャラクターを演じることで知られています。彼女の演技は、強烈な感情表現と繊細な内面の描写によって、観客に強い印象を与えます。また、彼女は多様な役柄に挑戦し、その都度、異なる側面を見せることで、幅広い才能を証明しています。
視聴者の反応と評価:『NOCEBO ノセボ』
- レビュー1: 8/10 – フィリピンの民俗恐怖
「ロンドンで設定されたこのアイルランド・フィリピン共同製作映画は、エヴァ・グリーンの演じるファッションデザイナーが奇妙な病に苦しむ様子を描いています。チャイ・フォナシエの演じるダイアナが伝統的なフィリピンの治療法で暗い真実を明らかにします。物語は緊張感を持ちつつ進行し、最後には全てが明らかになります。」
- レビュー2: 7/10 – 心理ドラマとしてのホラー
「映画の最初の10分は平凡に思えましたが、徐々に面白くなっていきます。エンディングは特に衝撃的。エヴァ・グリーンとマーク・ストロングの演技は優れているものの、全体としては忘れがちな映画です。それでもこのジャンルの平均的な映画よりは良いと思います。」
- レビュー3: 7/10 – 見応えのある作品
「エヴァ・グリーンとチャイ・フォナシエの演技がこの映画を引き立てています。ただ、マーク・ストロングのキャラクターはやや一面的に感じられる部分も。プロットを早期に予測できるかもしれませんが、それがかえってキャラクターとの結びつきを深めるかもしれません。」
- レビュー4: 8/10 – 効果的なホラーミステリー
「エヴァ・グリーン演じるファッションデザイナーと、彼女を世話するフィリピン人ヘルパー、ダイアナとの関係が中心です。ダイアナのモチベーションとアジェンダは謎に包まれていますが、映画の終わりにはすべてが論理的に結びつきます。非常に思慮深く、カタルシスを感じさせる作品です。」
これらのレビューは、『NOCEBO ノセボ』に対する視聴者の様々な反応を代表しています。肯定的な意見といくつかの批判的な点がバランスよく示されており、映画の多面的な評価を反映しています。
まとめと感想、考察
『NOCEBO ノセボ』は、心理的な深みと文化的な背景を巧みに織り交ぜた作品であり、映画愛好家にとって見逃せない一作です。ロルカン・フィネガン監督の独特の演出と、エヴァ・グリーン、マーク・ストロング、チャイ・フォナシエの力強い演技が、この心理スリラーをさらに際立たせています。映画は、ただ恐怖を描くだけでなく、深い人間の感情や社会的な問題にも光を当て、観る者に強い印象を残します。
その複雑で層の深いストーリーテリングは、視聴者に独自の解釈を求め、映画の後も長く心に残ります。『NOCEBO ノセボ』は、単なるスリラーではなく、観客が思考を巡らせ、議論を交わすきっかけを提供する映画と言えるでしょう。この映画は、映画の力がいかに人の心に影響を与えるかを示す、現代映画の隠れた傑作です。
2024年アメリカ公開映画
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