「かなり人を選ぶので閲覧注意」ファンも迷う映画『アステロイド・シティ』物語エンディングまでネタバレ。ウェス・アンダーソン監督最新作も迷作?1950年代のSF劇と、その作品を作った劇作家の舞台裏が描かれるというなんともバラついた物語のため楽しめる人、楽しめない人が見事に分かれている。
もくじ
映画『アステロイド・シティ』基本情報
『Asteroid City』は、ウェス・アンダーソン監督が手掛ける2023年の映画です。上映時間は約1時間45分で、出演者にはジェイソン・シュワルツマン、スカーレット・ヨハンソン
あらすじ
舞台は1955年頃の架空のアメリカの砂漠の町。ジュニア・スターゲイザー大会の参加者の前に突如世界を変える出来事が現れ混乱する様子を描いた作品。を作った劇作家コンラッドの舞台裏の様子も描かれる。
スタッフ
監督:
ウェス・アンダーソン (監督)
脚本:
ウェス・アンダーソン (原案)
ローマン・コッポラ (原案)
ウェス・アンダーソン (脚本)
キャスト
ブライアン・クランストン … ホスト役
エドワード・ノートン … コンラッド・アープ役
ジェイソン・シュワルツマン … オギー・スティーンベック役
ジェイク・ライアン … ウッドロウ役
スカーレット・ヨハンソン … ミッジ・キャンベル役
グレース・エドワーズ … ダイナ役
マヤ・ホーク … ジューン役
ルパート・フレンド … モンタナ役
ジェフリー・ライト … ジェネラル・ギブソン役
ホープ・デイヴィス … サンディ・ボーデン役
スティーブ・パーク (スティーヴン・パーク名義) … ロジャー・チョ役
リーヴ・シュレイバー … J. J. ケロッグ役
映画『アステロイド・シティ』物語ネタバレ
テレビホストが有名劇作家コンラッド・アープの作品「アステロイド・シティ」で若者天文学者の大会が開催されるという設定の劇で、劇は映画で上映されているワイドスクリーンのカラーで描かれ、この劇の舞台裏を描いたテレビ番組は白黒の映像で描かれる。
劇のカラー映像と、その間にモノクロの舞台裏が交互に描かれる。
テレビ番組の司会者(ブライアン・クランストン)が有名な劇作家コンラッド・アープ(エドワード・ノートン)が作った舞台「アステロイド・シティ」の紹介を行なっている。コンラッドはこの物語は1950年、天文学愛好家が集まる大会”ジュニア・スターゲイザーズ”に参加した人々を描いた話だと紹介する。
ACT I
戦争カメラマンのオギー・スティーンベック(ジェイソン・シュワルツマン)は”ジュニア・スターゲイザーズ”に参加するため、息子のウッドロウ(ジェイク・ライアン)、娘のアンドロメダ(エラ・ファリス)、パンドラ(グレイシー・ファリス)、カシオペア(ウィラン・ファリス)の五人でアステロイド・シティに到着する。車が故障したのでメ車屋のカニック(マット・ディロン)に修理依頼をするが車は修理不能のようだ。
オギーは電話ボックスで義父のスタンレー・ザック(トム・ハンクス)に連絡を取り娘たちを迎えに来てほしいと伝える。実はオギーの妻は亡くなっていることを子供たちにはまだその事実を伝えていないこと、そしてスタンレーはお前は娘にふさわしくないと考えていたことをはっきりと示すなど仲は悪いようだ。
”ジュニア・スターゲイザーズ”に多くの参加者が集まる。
女優のミッジ・キャンベル(スカーレット・ヨハンソン)と娘のダイナ(グレース・エドワーズ)。
JJケロッグ(リーヴ・シュレイバー)と息子のクリフォード(アリストウ・ミーハン)。
ロジャー・チョ(スティーブ・パーク)と息子のリッキー(イーサン・ジョシュ・リー)。
サンディ・ボーデン(ホープ・デイヴィス)と娘のシェリー(ソフィア・リリス)。
そして、教師のジューン・ダグラス(マヤ・ホーク)率いる小学生の集団、さらに乗っていたバスに置いて行かれてしまったカウボーイたちもいる。彼ら全員を迎え入れるのはモーテルのマネージャー(スティーブ・カレル)。
唐突に、オギーは子供たちに母親の訃報を伝え、彼らを慰める。その後、彼とウッドロウはミッジとダイナが食事をしているダイナーに戻る。オギーはミッジの写真を撮り、写真のプリントを彼女に渡すと言う。この時ダイナがウッドロウに恋心を抱いているような描写がある。
舞台裏(唐突に始まる)
このアストロシティの舞台の裏で、司会者が劇中でオギー演じるジョーンズ・ホールが、ある午後にコンラッドに会いに来たことを紹介する。彼はアイスクリームの容器を持ってきて、オギーのキャラクターのインスピレーションについて助言をもらった後、彼らはキスを交わす。
参加者たちはジェネラル・グリフ・ギブソン(ジェフリー・ライト)からのプレゼンテーションに参加し、ジュニア・スターゲイザーズを指導する天文台の科学者、ドクター・ヒッケンルーパー(ティルダ・スウィントン)を紹介する。ここで、参加者のウッドロウ、ダイナ、シェリー、クリフォード、リッキーのそれぞれ5人の見事な(SFな)発明品について表彰される。
ウッドロウがヒッケンルーパーに機器の一つに”地球外生命体がいる”と表示されていると伝えると博士の顔色が変わる。
参加者がランチをしている最中、ジューンはランチ中に一人の生徒を見失い、その生徒がカウボーイたちと一緒にタバコを吸っているのを見つけて怒る。
舞台裏
司会者がミッジを演じる女優メルセデス・フォードがカリフォルニアに向かう列車に乗っている場面を紹介する。そこにウッドロウ役のアンダースタディがディレクターのシューベルト・グリーン(エイドリアン・ブロディ)からの手紙を読み上げる。手紙の内容はシューベルトが彼女に対し謝罪する内容だった。
スタンレーはアステロイド・シティに到着し、孫娘たちが魔術で母親を蘇らせようとしているのを見て、孫娘たちと母親について話をする。
オギーとミッジは窓同士の距離が近い部屋に泊まっていた。オギーはミッジにダイナーで撮った写真を見せる。二人はそのまま話を続け彼女は次のプロジェクトの台本の読み合わせを行うが彼の目の前で体に巻いていたタオルを落として全裸を披露する。
その夜、ドクター・ヒッケンルーパーはアステロイド・シティのクレーターに全ての参加者を集め、一緒に空を見上げて小さなアステロイドを見せていた。すると突如上空から星ではない緑の光が差し込み彼らの頭上にUFOが飛来する。
UFOから現れたのは全身銀色で細身の体、目はライトを埋め込まれたかのように白く発光しているエイリアン(ジェフ・ゴールドブラム(クレジットに”The Alien”明記))だった。エイリアンは周囲を見回した後、何も言わずに展示されていたアステロイド(隕石)を持ち去って飛び去りますが、オギーはそのエイリアンの写真を撮ることに成功する。
ACT II
ジェネラル・ギブソンの命令により、UFO宇宙人と遭遇したアステロイド・シティは隔離下に置かれていた。訪問者たちは医療および精神的な評価を受け、アステロイド・シティで起こった出来事のニュースが全国に広まる。
エイリアンの出現について生徒たちに説明しようとするジューン先生だったが、無駄に知能の高い子供達を相手にどうやって説明するべきか困っていた。そこに現れたカウボーイのモンタナ(ルパート・フレンド)が現れ子供たちにわかりやすく説明しジューン先生からの株が爆上がりしている。
ウッドロウとダイナは天文台に行き、一緒に望遠鏡を見る。ダイナは自分の母親に対する感情について話し、ウッドロウは父親との関係について語る。その頃、オギーとミッジは、窓越しに会話をしながら彼の撮ったエイリアンの写真、窓越しに撮った彼女の写真を見せ、二人の関係が深まる。
ジュニア・スターゲイザーズのメンバーは兵士に賄賂を渡して家族に連絡を取るため電話を使うふりをして、町で何が起こっているのか新聞屋に伝えていた。
舞台裏
シューベルトがスタッフを集めコンラッドはキャストと一緒に、著名な演技コーチであるザルツブルグ・カイテル(ウィリアム・デフォー)を紹介しレッスンを始める。
ACT III
アステロイド・シティでの緊張が高まるが連日続く隔離対策に、JJ、サンディ、ロジャーはストレスを感じ軍部に訴えるが、何もしようとしない軍部に苛立ち、子供達の発明品を持ち出しその威力を軍に見せつけ現状を打破しようと動き始める。ジューンの生徒たちは、カウボーイたちと仲良くなり一緒に演奏し歌って踊って仲良く現状を楽しんでいた。
ギブソン将軍は出席者を集め隔離解除することを宣言しかけていると、再びエイリアンが頭上に現れアステロイドをクレーターに戻し立ち去っていく。その様子を見ていたギブソン将軍は隔離を再び実施しようと宣言し、参加者たちは反乱を起こし彼らの発明品で軍を制圧する。ウッドロウとダイナはこの混乱の中初めてキスをします。
舞台裏
演技を終えたジョーンズはタバコを吸うために外の消防階段に出ると、隣のビルでタバコを吸っていた本来ミセス・スティーンバックを演じるはずだった女優(マーゴット・ロビー)と出会う。そこでカットされたセリフを教えてもらいジョーンズは自身の役が演じる動機を知って劇に戻る。その後、劇の進行役が劇が終わる間際にコンラッドが自動車事故で亡くなったことを発表される。
エピローグ(エンディングネタバレ)
オギーは目を覚ますと、隔離が解除されて以来、彼と彼の子供たち以外の全員がアステロイド・シティを去っていることを知る。スタンレーと子供たちと一緒にダイナーに行き、最後の食事をしていると、そこでミッジから言伝を預かっていたウェイトレスから、連絡先が書かれたメモを渡される。ウッドロウもダイナがカップルになったと語り、朝食を済ませた一家はアステロイド・シティを立ち去り物語は終了する。
海外の感想評価
IMDbでは本作の評価は7.1/10と高評価。ざっくり紹介。
6/10
ウェス・アンダーソンのファンには楽しめるだろうが、物語性やインパクトに欠けている
ウェス・アンダーソンほど独自で特徴的なスタイルを持つ独立映画作家はそうはいない。彼の特徴的な美学は、彼の映画を見るだけですぐにわかる。
しかし、彼の映画はただ見た目が魅力的なだけでなく、風変わりで地に足がついたような面白おかしさと、よく書かれた脚本が特徴的である。
彼の作品のファンとして、私は「アステロイド・シティ」を楽しみにしていた。この1950年代の砂漠の町でのUFO/エイリアンの目撃談というレトロなSF物語は、アンダーソンが期待される雰囲気を十分に提供してくれるが、それを視覚的な要素やオーター的な要素と一緒に、同じくらい強く、または効果的なストーリーやキャラクターの成長と組み合わせることには失敗している。
6/10
この映画は真のアンサンブル作品であり、明確な主人公は存在しない。
関与するキャラクターが魅力的に書かれていれば問題ないのだが、脚本は彼らの動機を「スタイル」や世界創造、より抽象的なテーマに次ぐものとして扱ってしまう。
テーマ的にも映画は少々不活発で、サブテキストを飛び跳ねるように提示するが、それを正当化するプロットコンテクストを提供しない。
これは劇というフレームデバイスを通じても同様だ。
アンダーソンの大規模なアンサンブルキャストは一般的に与えられた材料でかなりうまくやっているが、彼らの行動は結果やプロットへの関連性から取り除かれており、私たちが彼らのキャラクターに感情移入することを難しくしている。
優れた技術が見事に展示されていることで、これらの懸念は少し和らげられる。プロダクションデザイン、撮影、衣装デザイン、編集など、ウェス・アンダーソンの基準でも十分によくできている。
しかし、プロットやキャラクターの動機が比較的に開発されていないという事実は、彼の優れた作品、例えば「グランド・ブダペスト・ホテル」、「ムーンライズ・キングダム」、「ロイヤル・テネンバウムズ」、「ファンタスティック・ミスター・フォックス」に比べると少々違和感がある。
「フレンチ・ディスパッチ」のアンソロジー構造でさえ、よりキャラクタードリブンで本物のように感じ、したがってこの映画よりも概念的に引き込まれる。間違いなく、アンダーソンは常に創造的なビジョナリーであり、彼のファンはこの映画を観ながら一般的に良い時間を過ごすはずだ。ただ、映画があるべきよりも空虚で忘れられやすい印象を持つのは少し残念だ。多くの良い要素があるにもかかわらず、そうである。ウェス・アンダーソンのファンにのみお勧めします。6.5/10。
7/10
このキャストはこの脚本を受け入れるには値しない
ウェス・アンダーソンは素晴らしいキャストを集めました。彼らのうち少なくとも10人は自分自身でトリプルAの映画を引っ張ることができます。
残念ながら、ウェスは良い映画には良いプロットも必要だということを忘れてしまったようです。
ビジュアルは抜群で、ほぼすべてのショットが賞を取るべき写真でもあります。演技は見事です。セッティングは壮大で、この映画についてのほぼすべてが完璧です。
ただし、プロットだけが例外です。あなたがユーモアが好きなら、この映画が気に入るでしょう。ビジュアルを求めて来るなら、この映画を愛するでしょう。演技が好きなら、素晴らしい時間を過ごすでしょう。しかし、関与したいと思っていますか?他の場所を探してください。
ウェス、あなたの台詞は面白くて機知に富んでいます。しかし、あなたのプロットは内容を欠いています。プロットの改善に努めてください。
4/10
彼の映画の中で最悪、こんなに素晴らしいキャストがもったいない
これは彼の映画の中で断然最悪のものです。こんなにも素晴らしいキャストを集め、彼はそれらと何もしなかった。
演技は良いですが、興味深い物語が欠けていることは信じられません。美しい映画ではありますが、ビジュアル的にも彼の作品の中で最も興味淡白なものです。
「フレンチ・ディスパッチ」は彼の初の失敗で、「アステロイド・シティ」は彼の二度目の失敗、本当に三度目がないことを願います。
彼が次の映画で彼を助けてくれる良い脚本家、または脚本家を雇うことを願っています。彼がアートディレクション、撮影、そしていくつかの面白いビットを作り出すことができることはわかっていますが、彼はプロットについて助けが必要です。本当に、こんなに素晴らしいキャストを集めて、これを作り出すなんて、とてもとても悲しいです。何ともったいない。本当に失望しました。
まとめ「最近のウェス作品見てるならどうぞ」
グランド・ブダペスト・ホテルが大好きだった。私のような人間でも見やすく分かりやすくキャラが入り乱れても全員にしっかりと感情移入できて、ビジュアルも演技も何もかもが見事、脚本ストーリーには文句がつけようもなく完璧としか言いようのない映画だった。
だからこそ、以降の彼の映画は徐々にウェス・アンダーソンの個性が全面に出過ぎてキワモノ感が出てきたのが少し気になっていた。ほら犬ケ島とかフレンチ・ディスパッチ?だっけ?とか、ちょっと個性ですぎて日本人でもううむ、ってなったよね。だけどファンタスティック・ミスター・フォックスは死ぬほど楽しめた。
この差だと思う、本作アステロイド・シティはそのウェス・アンダーソン節が少し出過ぎてしまったようにも感じる。魅力的な・・・キャラ・・・なのか、魅力的な・・物語・・・でもなく・・・余計にも感じてしまった舞台裏の話・・・。レトロフューチャーな50年代を描いたSF映画の合間に白黒舞台裏、キャストも豪華なんだけど、なんだか誰が誰で何が何だか一回見ただけでは魅力は伝わってこなかった。
ウェス・アンダーソンファンにはたまらないんだろうけど、私みたいに頭を使えない文系な人たちには魅力が半減しているように感じる。
いや、見る価値はあると思う。既存の映画とは違う何かがあるとは思う。でも、、、、見終わった後にうーんと少し首は捻るものがあることは知っておいた方が良い。
2024年アメリカ公開映画
ネタバレ↓