「彼が最後に生み出したのは?」映画『INSIDE(2023)』物語ネタバレ!ウィリアム・デフォーが高層ビルの一室に閉じ込められわずかな食糧でサバイバルする作品だが、その中で明らかになっていく「創造と破壊」とは?わずか3名のキャストだけでここまで壮大な物語を生み出す監督の評価は鰻登りです。
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もくじ
映画『INSIDE(2023)』物語ネタバレ
美術品泥棒のニモ(ウィリアム・デフォー)は、幼い頃に教師から”家が火事になったときに救うべきものを3つ選びなさい”と問われたとき、ニモは家族ではなく、飼い猫、AC/DCのレコード、そしてスケッチブックを選んだ話をする。あれから時は経ち猫は死んでアルバムは失われたが、スケッチブックは今も持っていると答える。
美術品泥棒のニモ
便利屋に変装したニモは仲間と入念に準備し、高層ビルの高級ペントハウスに忍び込むと”エゴン・シーレ”の作品を探すが、肝心の”シーレの自画像”が見つからず、仲間の指示通りに厳重に閉ざされたドアのシステムコードを入力するが、突然セキュリティシステムが作動してニモはペントハウスに閉じ込められてしまう。
警報が鳴り響く中なんとかセキュリティを解除しようとするが逆にシステムを破損させてしまい温度計が故障し熱風を出し始めるだけだった。室温が上がり続ける中、唯一の脱出手段と思われた木製のドアを破壊させるため多くの時間を費やすが中に鉄板が入っておりこれ以上破壊させることができず諦める。
いつの間にか仲間もニモを見捨てたのか連絡が取れなくなってしまう。気温が上がり続け汗だくになりながら周囲を確認し、水やガスは止まっていたが、冷蔵庫を物色しわずかに残された高級な食材を盗み食いしたニモは寝室で眠ることにする。その間にも温度システムは悪化し続け勝手に33℃の温風を出し部屋の中は蒸し風呂状態に陥る。
翌朝、ヘリコプターの音で、警察か、仲間かと期待するが立ち去る。外を見るとバルコニーに防鳥ネットを突き破って傷ついた鳩が座り込んでいるのを見つける。定期的に仲間に無線連絡を行うが返答はない。
天窓からの脱出
数日が経過し空腹と水不足に悩まされながらニモは天窓からの脱出を思いつき、天窓に届くように家具を組み合わせて巨大な足場を作り始める。水不足で死にかけるも屋内菜園のために定期的に出てくるスプリンクラーの水を飲むことで解消されやる気が復活したニモはなんとか天窓に届く足場を完成させる。ニモの唯一の安らぎはビル全体の防犯カメラを見ることだった、ある日、家政婦ジャスミン(ニモが勝手に名付けた)の行動を監視していると、なんとニモがいるペントハウスの部屋の廊下を掃除しているのを見てドアの内側から家政婦を小さな声で呼ぶが彼女に声は届かない。大声を出したり叩きつけるぐらいはできそうだがニモのなかに逮捕されずに脱出したいと言う気持ちがあったのかもしれない。
空調システムが今度は冷風を出し始める。
室温が下がり快適になったことでニモのモチベーションが復活。天窓の解体作業に入る。天井の窓枠のモルタル部分を長い間ひたすら削り続ける。(この時台所に散乱した食器や食材が映るがひょっとしたら数週間経過してる可能性がある)
それからニモは天窓を削り、食事をして防犯カメラで例の家政婦ジャスミンの動向を見て楽しみ眠り、再び天窓を削り続ける日々を続ける。この辺りからニモは独り言が増え始め精神的に追い詰められてきているようにも見える。
冷風と自画像
最悪なことに、冷風は止まらずついに室温が10℃を下回るようになり吐く息が白くなるほどに寒くなってしまう。ニモは寒さを凌ぐためクローゼットを物色している最中に隠し通路を発見する。そこは人が一人通れるほどに狭い通路を突き進み開けた空間に出る。するとそこにはずっと探していた”シーレの自画像”を発見して持ち出す。(バルコニーに侵入して怪我をした鳩は餓死していた)
精神的に追い詰められたニモは再び家政婦のジャスミンがドアの前に来た時に大声を出して叩きつけるがジャスミンはイヤホンをして作業をしているためかニモの声は届かなかった。天窓のモルタルを剥がし終え六角ボルトで固定されたネジを外そうとするが肝心の工具がないため苦戦するが、何度も何度も挑戦した結果やっと一本のネジを外すことができる。
何本もの椅子の脚を加工してボルト外しに使って一本、また一本ボルトを外すが、膨大な時間がかかる。独り言が増え続け、アパートの美術品を研究し、自分の作品を作り、壁に複雑な絵を描き始める。ついには食料も無くなり水槽の魚を砕いて食べ、カビが生えてカチカチになった果物だったものを無理やり水で流し込み、ドッグフードを食べ、外したボルトを置く祭壇を作り、なんとか、なんとか生き続け、ボルトを外す生活を続けた結果、ニモは断続的に幻覚が見えるようになってしまう。
ある日、残り三つのボルトのうちまた一本のボルトを外したところで天窓の作業中に足を滑らし足場から落下して足を骨折してしまう。
エンディングネタバレ「破壊と創造」
全てを諦め天井を見上げた時に見つけた煙探知機を作動させスプリンクラーでペントハウス中が水浸しになりながら助けが来るとドアの前で待機するが、システムが故障しているためか外部からの助けが来るどころか、完璧に密閉された部屋の水位が上がり続ける。
絶望しかけたニモが次に行ったのは盗もうとした作品の避難だった。ニモは盗もうとしていた作品を全て壁から外し、スプリンクラーが止まった後、壁に家主に向けてメモを残す。”猫は死に、音楽は失ったが、芸術は残った。あなたの三つの作品は避難して保存した。あなたの部屋は私にとっての檻だったが、破壊無くして創造無しだったので申し訳ない”
と書く。
しばらくの時間が経った後、骨折した足を引きずり、なんとか足場をのぼり最後のボルトを外したニモは鼻歌を歌いながら天窓を外し外に飛び出していく。
ニモが立ち去ったペントハウスの様子が映し出されるが、そこにはまさに破壊無くして想像なしを体現するかのように、ニモの魂の芸術品が太陽に照らされ残されていた。
まとめ考察
ウィリアム・デフォーがサバイバルするってだけで十分見る価値があったが、こればかりは予告編の期待以上の面白さで驚いた。
彼が最後に生み出したのは?
ネタバレしているしここでは問題ないだろうが、まさか何ヶ月もの間のサバイバルをする羽目になるとは思わず、水を求めて冷蔵庫を舐め回すシーン、スプリンクラーを浴びて笑顔で眠るシーン、トイレがわりのお風呂、足場、祭壇、礼拝、独り言、隠し扉、天国と地獄、独自の芸術を生み出し最後は見事に脱出するまでが105分?
とんでもない3時間以上は彼と一緒にどうすれば脱出できるのか考え、共に極限状態に陥り、精神的に錯乱し、時にはジョークを、徐々に芸術に倒錯していくという濃厚で濃縮されたような気分だ。あれが105分とはいまだに信じられない。彼と一緒に数ヶ月間閉じ込められていたような気分でもあるし、最後の脱出前の作品を保存する姿、諦めではなく何か別の、、、そして彼が盗もうとしたもの以上の価値がありそうな、ウィリアム・デフォーの作り上げた魂の芸術作品の姿はなんだかもう・・
エンディングでニモは脱出したのか?
ニモが最後に脱出できたかどうかははっきりしていない。
幻覚症状に陥った彼の幻覚かもしれないし、彼は天窓から外に出ることはできたが、バルコニーで餓死した鳩と同じ運命を辿る可能性もあるし、脱出して彼は泥棒を脱却して偉大な芸術家になったかもしれない。
続編がある可能性が?
海外では、彼の行く末が気になる人、そしてニモのように極限状態に陥った人々を描いた映画シリーズを希望しているレビュアーが意外と多いため、ひょっとするとひょっとするかもしれませんが現時点で公式から続編についての発表はない。
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主演のWillem Dafoeをウィリアム・デフォーと訳すのは無理があるとおもいます。
そ、そうなんですね!!
サム・ライミスパイダーマンで
そう覚えてました……m(_ _)m