「私たちは監督ではなく、監督の作品が好きなのだと思い知った」高評価を受けるも何かが引っかかる映画『フェイブルマンズ』物語結末までネタバレを紹介。スティーブンスピルバーグの半生を描いた集大成と呼ばれる本作はうつ病の母の不倫など棘のある退屈でつまらないと感じてしまった話。
もくじ
映画『フェイブルマンズ』物語ネタバレ
1952年、冬のニュージャージー夜、
バート・フェイブルマン(ポール・ダノ)と妻のミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)と息子のサミー(マテオ・フランシス=デフォード)を連れてサミーにとって初めての映画「地上最大のショウ」に連れて行きます。緊張するサミーに、二人は映画がどれだけ素晴らしいか、楽しい時間を必ず過ごすことができると約束して中に入る。そこで生まれて初めての映画を見たサミーは映画に夢中になる。彼が特に印象に残っているのは人が乗っている車と列車が衝突し中にいた人々や貨物が崩れるシーンだった。帰りの車の中でサミーは目を見開いてまだ映画の興奮から覚めずにいる様子だった。
サミーには、レジー(バーディ・ボリア)、ナタリー(アリーナ・ブレイス)、そして赤ん坊のリサという三人の妹がいる。ハヌカを祝い始め、バートはサミーに汽車セットをプレゼントする。バートとサミーは早速ガレージにレールを敷いて汽車を動かせて家族みんなを幸せにする。実際に蒸気を出して走るおもちゃを見ていて映画のシーンが蘇ったサミーは家族が寝静まった夜にガレージに忍び込むと車のおもちゃに人形を乗せると車と列車が衝突する映画のワンシーンを再現する。しかし予想以上の迫力で汽車が吹き飛び驚いたサミーは両親を起こして心配をかけてしまうのだった。
初めてのビデオカメラ
母のミッツィは、サミーが映画のシーンがトラウマになり頭から離れていないこと、その恐怖心をコントロールしたいのだと考えサミーにビデオカメラをプレゼントする。フェイブルマンズ一家に、バートの親友ベニー・ローウィー(セス・ローゲン)が訪れ食事会を開いた後、サミーは早速列車おもちゃと車が衝突をする短編映画をフィルムにしてもらいミッツィと一緒に見て今までで最高の映画だと賞賛するのだった。
それからサミーは映画作りに夢中になる。レジーとナタリー姉妹を登場させてケチャップを血糊代わりにした歯医者の話、トイレットペッパーを巻いてミイラにしたり、家の中でホラーを作ったりと短編映画を次々と作る。ミッツィは困った顔をするもののサミーの志を理解しているのかミッツィは笑って許してくれるのだった。
ある日、一家はアリゾナに行くこと行くことが決まるがミッツィは喜ばず口論となる。喧嘩の最中に子供たちが騒ぎ始め外に巨大な竜巻があることを知らせる。ミッツィはサミー、レジー、ナタリーを車に乗せて竜巻を近くで見ようと車を走らせるが、危うく交通事故に遭いそうになる。動揺する子供たちに向かいミッツィは “すべての出来事には意味がある “と言わせるのだった。
アリゾナへ
フェイブルマン一家(と、親友のバートも)はアリゾナへ引っ越す。
数年後、サミー(ガブリエル・ラベル)は、レジー(ジュリア・バターズ)、ナタリー(キーリー・カーステン)、リサ(ソフィア・コペラ)そしてアリゾナの新たなボーイスカウトの友人たちと短編映画を作りを続けていた。
彼らは映画よりもサミーの片想いの女の子について話に夢中になっている間、サミーは ジョン・ウェインが出演している”リバティ・バランスを撃った男 “を集中して見続けていた。その後、ボーイスカウトの仲間を集めて西部劇の短編映画「GUNSMOG」を撮影し自分で編集した作品を多くの仲間に披露し好評を博すのだった。映画を見たバートからサミーの映画作りのアイディアについて話をしながら運転方法を学ぶが、バートはサミーには虚構の現実ではない映画作りを止めて”本当に大切なこと “をするようにと言うのだった。
ベニーと一緒にキャンプに出かけた一家は。サミーは子供たちのためにミッツィがおどけた演技をして、一緒に楽しんでいる姿を何枚も記録する。夜、ミッツィはダンスを始め、ベニーはサミーの録画のために背後から車のヘッドライトを点灯させるとドレスが透けて見えると注意を受けるがミッツィは踊り続ける姿をバートは見惚れ続けるのだった。
祖母の死、叔父の言葉
その後、ミッツィの母親が亡くなり、ミッツィから生気が失われていきうつ病を患ってしまう。そんなミッツィを元気付けるためにバートはサミーに編集機械をサミーにプレゼントしてキャンプ旅行の短編映画を作るよう依頼する。バートは、以前映画を止めるように言った手前、母を元気づけるためにサミーに映画を撮ってほしいと依頼するのは自分勝手だなと言う。その夜、ミッツィは母親からの電話で”誰かが来る”という警告を聞いたのだと言う。
翌朝、母の電話一家を訪れたのは、ミッツィのお母さんをビックリさせた過去を持つという叔父のボリス・シルドクラウト(ジャド・ハーシュ)だった。母の警告は本物だったのだと喜ぶミッツィはボリスを迎え入れる。彼は無愛想に見えるがサミーの芸術への憧れに理解を示すが、ボリスは、ミッツィはピアノの才能があったのに自分のピアニストの夢をあきらめて楽な道を選んでしまったと話すと、サミーに芸術を追求すれば必ず心を引き裂かれるだろう、だがたとえ家族関係と衝突しても映画制作を続けるのだと伝えるのだった。
母の不倫
ボリスに勇気づけられたサミーは、キャンプ映画の制作に取りかかる。しかし編集作業中にミッツィとバートの親友ベニーが親密そうに一緒に歩き出したり抱きついているシーンが何度も写っていることに気が付きてしまう。母の不貞とベニーの裏切りを知ってしまったサミーは2人を恨むようになる。
その悔しさを次回作の戦争映画への情熱に変換させ特に演出面では死んだ兵士を演じる俳優に対してもっと心を込めて本気で泣いてほしいと指示する。サミーは完成した戦争映画を公開し最後のシーンは特に皆を感動させて歓声と拍手を浴びる。喜ぶミッツィとベニーが駆け寄るが二人をわざと無視して他の家族と会話を続ける。
無視を続け苛立つサミーとミッツィは大喧嘩をしミッツィがサミーの背中を叩いてしまいサミーは部屋に逃げる。ミッツィは後悔し謝罪して何があったのか話をしてほしいと話を聞きに行くとサミーは何も言わずに映写機を準備すると彼女とベニーの不倫映像を見せる。ミッツィは涙を浮かべながらサミーに謝罪するが父や姉妹には内緒にしてほしいと頼み、サミーは誰にも言わないよと母を抱きしめる。
カリフォルニアへ
バートは新しい仕事を始めることになり、一家は再びカリフォルニアに引っ越すことになるが、サミーは母の不貞を知って以来映画への情熱を失ってしまいカメラを売る。それを知ったベニーが新しいカメラを買ってサミーにプレゼントするがサミーは拒否をする。それでもベニーはカメラを無理やり渡すと俺を嫌うのは勝手だがミッツィの心を傷つけることになるから映画製作はあきらめないでくれと言うとサミーの前から立ち去る。
カリフォルニアに引っ越したサミーは高校に入学する。バレーボールの授業中にぶつかったことが原因でローガン(サム・レヒナー)とチャド(オーケス・フェグリー)の二人から目をつけられサミーがユダヤ人だからと サミーのことを”ベーグルマン “とバカにするのだった。
その後、サミーはレニー(チャンドラーラブール)とキスをしているローガンを目撃してしまう。サミーが見ていたと知らずいつものようにローガンとチャドが絡んでくるが、ローガンの本命の彼女クラウディア(イザベルクスマン)にレニーとのキスについて知っているか?と密告して二人の中を壊す。怒ったローガンはサミーの顔を殴りクラウディアに言ったことは嘘だと言えと脅されてしまう。両親とも口論になりどうしようもなくなったサミーは部屋で封印していたベニーからもらったカメラのフィルムが回る音を聞いて心を落ち着かせるのだった。
モニカとの出会い
後日、サミーはクラウディアと彼女の友人モニカ(クロエ-イースト)にあの日のことは嘘だったと伝えるがクラウディアとモニカはサミーが嘘をつかされていると簡単に気付きモニカはサミーを気に入り自宅に招く仲になる。
モニカはフェイブルマンズ一家に招かれ食事会を行う。そこでモニカは休日にビーチで行われる “Ditch Day “の撮影を提案しモニカの父が16mmカメラを所有していることを聞いて借りれないかお願いをする。ビーチで開催されたクラスメイトたちが集まり騒ぐイベントが始まりサミーはカメラを持って撮影し続けモニカや仲間たちと一緒にイベントを楽しむのだった。
フェイブルマンズ一家は新しい家に引っ越している様子をカメラに収めているが、ミッツィの表情は曇ったままだった。その後、子供たちを前に、バートとミッツィはミッツィと離婚することを切り出し全員が信じられない様子だった。子供たちは父親を愛していないのかと涙ながらに問い詰めるが、父バートよりもベニーの方を愛しているとはっきりと伝え子供たちをバッサリと切り捨てるのだった。
サミーはモニカをダンスパーティーに参加し愛を告白し、一緒にハリウッドに行かないかと誘うが、彼女もテキサスの大学に行く夢が諦められないと振られてしまう。
ダンスの時間が終わると今度はサミーがディッチデイのイベント映像を流すと、見事な映像編集テクニックでイキイキと映し出される彼らの姿が上映されると最高のプレゼントになったようで全員から惜しみない喝采を浴びるのだった。特にローガンの良さを全面に描いた主役のような扱いに観客は大興奮し、上映終了後にローガンはクローディアからキスされるのだった。
サミーは廊下に座り込んでいた。どんなに拍手喝采があっても愛するモニカを失ったサミーには何も意味がない様子だった。そこにローガンが現れあんなにサミーをいじめまくったのになぜ映画であんなに好意的に自分を映してくれたのか理解できず困惑していたが、チャドが現れサミーを殴ろうとしたところをローガンが殴って撃退し、二人は絆を深め友好的に別れるのだった。
サミーは家に戻り、ミッツィと話す。彼女はベニーへの愛を諦めきれないこと、そしてサミーには同じぐらい映画への愛も諦めるなと伝えると二人は抱き合い、サミーは母を許すことができるようになる。
エンディングネタバレ「一年後」
1年後、
サミーはハリウッドでバートと暮らし映画の仕事を探しているがなかなか仕事が見つからず自信を失い壁にぶつかっていた。そこにフェニックスに戻ったミッツィから手紙と写真が届きミッツィとベニー、そしてフェニックスに行ってしまった家族たちの幸せそうな姿を見てバートは動揺を隠せずにいたが、サミーに向き合うと自分の幸せのために自分の道を歩めと励まし、手紙に紛れていたCBSからサミー宛の手紙を手渡す。
サミーは “ホーガンズ・ヒーローズ “の仕事のためにパラマウント・ピクチャーズの重役に会い、テレビよりも映画に興味があると伝えると有名な映画監督ジョン・フォード(デヴィッド・リンチが演じている)と5分間だけ会う時間を作ってくれた。
フォードは葉巻を吸いながら、サミーに2枚の絵を見て、1枚は地平線が下にあり、もう1枚は上にあることを指摘するように言う。彼は、その2つの位置が芸術の最も魅力的な場所であり、地平線が真ん中にある状態は「クソつまらない」とフレーミングの極意を教える。
大物との出会いによってサミーは自分の芸術に対する感覚を取り戻しオフィスを出て歩くシーンが続く、そして、カメラは一瞬だけ水平線が下に来るように上を写したところで物語は終了する。
海外の感想評価 メタスコア: 84
8/10
マントのないオリジン・ストーリー
The Fabelmans この映画のことを知ったときから、ずっと興味があった。E.T.」で初めて映画館での思い出に残る体験をした子供として、スピルバーグほど私の映画体験に影響を与えた映画監督はいない。だから私は、個人的な物語、マントもスーパーパワーもない原点回帰の物語を100%受け入れる準備が出来ていた。CGIもない。モーションキャプチャーもない。ただ、子供の目を通して、家族の力と物語を描いた映画です。それはまさに…。しかし、それ以上でもあるのです。スピルバーグが自分の物語に後から意味を持たせるやり方には、おおらかさがある。誰も悪人でもヒーローでもない。彼らは、幸福と責任の間で選択をしながら、それがどちらか一方である必要はないかもしれないことをゆっくりと痛感している人たちなのです。うまくいったシーンとそうでないシーンがありましたが(3幕もまだ整理中)、自分の物語かどうかは別として、こうして物語を語るのは楽しいものです。
7/10
オマージュとしては良いが、長すぎるし、スピルバーグのベストの一つとは言えない。
6歳のときに初めて見た映画に心を奪われ、映画製作に情熱を燃やすサミー・ファベルマンを中心に描いた半自伝的映画。両親の結婚生活の破綻、高校でのいじめと反ユダヤ主義、若い頃の恋愛と青春、そして一般的な利己主義など、さまざまなテーマを深さと成功をもって探求している。
この映画は長すぎて、最初の45分間は少し退屈に感じた。しかし、脚本に難があり、演技は全体的に素晴らしいが、サミーの両親役のポール・ダノと特にミシェル・ウィリアムズの演技は、影響を受けすぎていて、少し作為的な感じがした。これはスピルバーグが意図的に指示したことなのかとも思うが、私にはうまくいかない。
10代のサミー役のガブリエル・ラベルは最高だし、ボリスおじさん役のジャド・ハーシュもカメオ出演で素晴らしい。ジョン・ウィリアムズはいつものように完璧なスコアを提供し、映像も見事だ。
全体としては、スピルバーグの子供時代を知るために見る価値はあるが、映画全体としては物足りなさがある。もっともっと良くできたと思う。
8/10
“映画とは忘れられない夢”
スティーブン・スピルバーグが「地上最大のショウ」の列車事故に怯える子供から、思春期の映画製作者に成長する姿を見ることができます。彼は家庭の問題や両親の離婚について、かなり率直に語っています。大人になるということは大変なことだと悟り、許そうという気持ちがあるのだろう。
150分というと、自己満足な感じがするはずだが、母親役のミシェル・ウィリアムズと父親役のポール・ダノの演技が凄いので、そんなことはない。誰も演技をしているように見えないのが、スピルバーグ・マジックの半分である。また、ライオンの使い手である不敬なおじさん役のジャド・ハーシュや、ジョン・フォード役のデヴィッド・リンチが素晴らしいカメオ出演をしています。
登場人物の中には、特に姉妹のように大雑把に描かれているものもあるが、それがウィリアムズ嬢やダノ、ガブリエル・ラベルのスティーブン・スピルバーグというキャラクターを際立たせる役割を果たしている。スピルバーグと、彼のよく協力するトニー・キューナーが、戦後のユダヤ人家庭の素晴らしい肖像を描いたということでしょうか。
まとめと感想「ケツが痛くなる退屈さ」
音楽がすごい。
だが、全体的に退屈だった。きっと生粋の映画ファンなら喜ぶようなオマージュが散りばめられているのだろうが、なんだろうか、面白くないと思ってしまった。映画にグッときた少年が大学生までにいろんな短編映画を撮りまくるだけならよかったが、母親の不倫とうつ病、残された家族の苦悩とか結構痛い話を盛り込んでくるからほっこりするわけではなく、誰もが驚愕するようなすごい奇跡的な何かがあるわけでもない、普通の少年が大人になる過程をほんの少しだけ映画的に撮影しただけ、、、と感じた。
だから上映中の2時間30分は長いと感じたしケツが痛いとずっと座り心地を気にしてしまっていた。
感動、、、はしなかったなぁ。
スピルバーグ監督が生まれるまでを描いた自伝的作品ということは知っていたので興味があったが、私が好きなのはスピルバーグではなくスピルバーグの作った作品で、彼がどんな人生を送っていたのかどうかは正直興味がないことがわかった。申し訳ない。
ただし音楽は素晴らしかった。音楽だけはずっと頭に残り続けた。
でもそれだけだった。
2024年アメリカ公開映画
ネタバレ↓