「ゴールデングローブ賞受賞間違いなしの傑作!」映画『イニシェリン島の精霊』物語結末までネタバレ。彼はなぜ親友を裏切ったのか?この島で何が起きたのか?難解なダークコメディをあなたは読み解くことができるか?
もくじ
映画『イニシェリン島の精霊』作品情報
原題:The Banshees of Inisherin
上映日:2022年11月4日(アメリカ)
制作国:
アイルランド/イギリス/アメリカ
公式サイト:日本語公式サイト
言語:英語
ロケ地
アイルランド、ゴールウェイ州、アラン諸島、イニシュモア
製作会社
Searchlight Pictures
Film 4
Blueprint Pictures
あらすじ
アイルランド西海岸の離島を舞台に、生涯の友であるパドレイク(コリン・ファレル)とコルム(ブレンダン・グリーソン)が、コルムから突然友情を絶たれ、行き詰まる姿を描いている。呆然とするパドレイクは、妹のシボーン(ケリー・コンドン)や問題を抱えた若い島民のドミニク(バリー・キーガン)に助けられ、関係を修復しようと試みるが、拒否される。しかし、パドレイクの度重なる努力はかつての友人の決意を固めるだけで、コルムが必死の最後通告をすると、事態は急速にエスカレートし、衝撃的な結末を迎える。
キャスト/スタッフ
監督
マーティン・マコナー
脚本
マーティン・マクドナー
キャスト
コリン・ファレル …パードリック
ブレンダン・グリーソン … コルム
ケリー・コンドン… シボーン
バリー・キョウハン… ドミニク・カーニー
ゲイリー・ライドン … ピーダー・カーニー
パット・ショート… ジョンジョ・デバイン
シーラ・フリットン… マコーミック夫人
映画『イニシェリン島の精霊』物語ネタバレ
1923年、アイルランド沖のイニシャーリン島アイルランド内戦が行われていた。
パードリック・スィリアベイン(コリン・ファレル)がいつものように長年の友人コルム・ドハーティ(ブレンダン・グリーソン)の家を訪問するもコルムはただ中に座って葉巻を吸い、パードリックに背を向けて無視をするだけだった。腑に落ちない考えながら家に戻ると妹のシボーン(ケリー・コンドン)がコルムと喧嘩でもしたの?と言われるがパードリックは身に覚えがない。
パードリックはいつもコルムと飲んでいるパブに行くとバーテンダーのジョンジョ(パット・ショート)もコルムと仲違いしているのかと聞いてくる。2人にそんなことを言われてもパードリックは本当に知らないのだ。
コルムはなぜ無視をする?
パードリックは再びコルムの家に戻るとコルムの犬以外見当たらないが、外を散歩しているコルムを追いかけパブでコルムに話しかけるがコルムは無視して外に出て飲み始める。パードリックはコルムに自分に腹を立てるようなことをしたのか?そうなら謝るよと言ったのが、コルムは”お前は何もしていない、ただ単にお前のことが嫌いになっただけだ”と言う。突然の告白に傷付いたパードリックは困惑しコルムは立ち去る。パードリックが帰宅する途中にドミニク・カーニー(バリー・キョウハン)と二、三話をする。
夜、パードリックの妹シボーンはコルムの心変わりに興味を持ちイニシェリン島の老女マコーミック夫人(シーラ・フリットン)を夕食に招き相談すると彼女はコルムの”息子ラリー”関連がコルムの狼狽の原因かもしれないと話す。
その夜、パブから音楽が聞こえパードリックが覗くとコルムたち演奏仲間たちが音楽会を開いて皆で音楽を奏でていた。パードリックとドミニクは一緒に飲みながら演奏に耳を傾ける。その後、全裸で泥酔して眠ってしまっているドミニクの父親で地元の警察官ピーダー(ゲイリー・ライドン)から酒を盗み二人でコルムの話をしながら外で酒を飲む。
翌朝、パードリックはカレンダーを見て昨日は4月1日のエイプれるフールだったことに気づきコルムがエイプリルフールの悪ふざけをしていると思って笑う。早速パブで作曲をしているコルムを見つけ悪ふざけはひどいぜと話しかけるがコルムは”お前はつまらないから友達をやめたいんだ”とパードリックを突き放し、パードリックは深く傷付いてしまう。
パードリックは帰宅しコルムに言われたことをシボーンに話すと怒ったシボーンはパブにいるコルムに怒鳴りつけ何が起きたのか?なぜこんな仕打ちを?兄は悪い人ではないとまくし立てるも、コルムはパードレイクは島民に好かれているが、残りの人生を作曲や記憶に残るようなことに費やしたいと願うコルムには島を愛する良いだけのパードリックは退屈なのだと伝える。
暴力男ピーダー
パードリックとシボーンが教会に向かう途中で血だらけのドミニクを見かける。ドミニクは、パードリックと一緒に親の酒を盗んだことがバレてぶん殴られたのだと言う。教会で神父にコルムの話を聞いて欲しいと依頼するが神父がパードリックについて話し始めたため口論になってしまったコルムはパードリックに次話しかけたらバイオリンを弾く大事な指を切り落としてパードリックのところに届けると最終通告をする。
ドミニクは家に帰りたがらないので、夕食に誘うもドミニクは、美しいシボーンがなぜ結婚しないのか質問攻めにし、シボーンたちを困らせる。
パードリックは島の雑貨店を営むオリオダン夫人(ブリッド・ニー・ニーハテイン)と話をすると彼女は何のニュースも流れないと愚痴をこぼす。ドミニクに暴力を振るった父親で警察官のピーダーがやってきたためパードリックはドミニクに暴力を振るったため息子は自宅で匿っていることを伝えるとピーダーはパードリックを脅し何度も暴力を振るう。その様子を目撃していたコルムがパードリックの手助けをして途中まで一緒に馬車の操縦を手伝ってくれた。やはりコルムは良いやつなのだとパードリックはコルムの行動に深く感謝し涙する。
夜、パードリックはパブで泥酔し、ピーダーと同席していたコルムに詰め寄ると今まで静かなパードリックだったがコルムに侮辱を浴びせ続け、ドミニクに呼ばれて立ち寄ったシボーンがパードリックを迎えに行くとコルムは、さっきのパードリックは長い間一緒にいるが一番面白かったと認める。
翌日、パドレイクは海岸でコルムと彼の犬を見つけ、酔って暴言を吐いたことを謝ろうと仲直りの握手を求めるが、コルムはただ消えろと言う。それでもパードリックはコルムの肩に触れようとしたりするため、求めていることとは真逆の行動を繰り返すパードリックに苛立ちを隠せないでいた。
コルムの決断
パードリックとシボーンの家のドアを叩く大きな音を耳にして外に行くとコルムが立ち去る姿を目にする。足元にはコルムの左手の人差し指が切断されて転がっていた…。
恐怖したパードリックはシボーンに指を見せ箱の中にしまうと。シボーンは箱を持ってコルムを訪ねこの確執を終わらせるためにはどうすればいいのかと率直に尋ねると、コルムはただパードリックの沈黙が欲しいと言うだけだった。
パードリックはパブでコルムと一緒にミュージシャン志望の若者デクラン(アーロン・モナハン)と一緒にいるのを目撃し嫉妬する。その帰り道、パードリックはデクランを馬車に乗せると、デクランの父親が車に撥ねられたと嘘をつき(デクランの母親の死因と同じらしい)今すぐデクランに島を出て行ってもらおうとする。
シボーンはピーダーに見つかり、ドミニクを家に送り返すように言われるが暴力をするドミニクに反論し口論となりシボーンに「こんなだから誰からも好かれないんだ」と言い放ち、彼女は深く傷つき夜ベッドで泣く。
夜、パードリックは一人で道を歩いていると、マコーミック夫人に出会い彼女はパードリックを見つけると”今月中に島で死者が出る2人かもしれない”と予言する。
ドミニクはシボーンに交際を申し込むが、彼女はやんわりと断り、彼は落胆する。
エンディングネタバレ「コルムはなぜ?」
パードリックはコルムの家に再び訪れると根負けしたコルムは”The Banshees of Inisherin (イニシェリン島の精霊)”というタイトルの歌を完成させたことを伝え、コルムが和解を持ち出そうとするが、パドレイクはデクランを去らせるために嘘をついたことを話してしまう。あまりの悪戯に言葉を失ったパードリックが去った後、コルムは鋏に目をやり、彼の犬はそれを隠そうとしますが、コルムはそれをつかみ外に出る。
パードリックは、島が嫌になり本土で図書館の仕事をするため船に乗ることを決めたシボーンの話を聞きながら帰路に着くと左手の指を全て切り落とし家に投げつけたコルムとすれ違う。パードリックはシボーンの荷物を運ぶのを港で別れを告げ家に戻ると、ペットで愛するロバのジェニーがコルムの指を食べて窒息して死んでいるのを発見する。パドレイクは打ちひしがれジェニーを埋葬する。
パードリックはパブに行き、コルムにジェニーのことを話すとコルムは本当に申し訳なさそうに謝罪するがパードリックは明日の2時にコルムの家を燃やすと脅す。話を聞いたピーダーがパードリックに掴みかかると、コルムに殴って気絶させられてしまう。それでもパードリックは脅迫を実行するつもりでいた。
翌日、パドレイクは薪と灯油、そしてランタンを集め馬車でコルムの家に火をつける中にコラムがいたが彼の愛犬だけ保護するとその場を立ち去る。
マコーミック夫人は、パードリックを殴りに行く途中のピーダーを見つけると川で水死体になったドミニクの死体を見せられピーダーは取り乱す。
パードリックはシボーンから手紙を受け取る。彼女はすでに職を確保し、パードリックを本土に誘ってくれていた。しかしドミニクが川で死んでいるのが見つかったこと(パードリックはシボーンに滑ったと言うが、自殺した可能性もある)、動物の世話をしなければならないので行くことができないと返事を書く。
翌朝、コルムの家は焼け落ち、跡形もない。パードリックは犬を連れて浜辺に行き立っているコルムを見る。
犬がコルムに駆け寄ると、コルムはこれでおあいこかと聞くが、コルムが死んでいればおあいこだったと言う。
パードリックが立ち去ろうとすると、コルムは犬の世話をしてくれたことに感謝し、パードリックは”いつでもいいよ”と言います。マコーミック夫人が遠くからすべてを見守る中、彼は歩き続ける。
海外の感想評価 IMDb:8.2/10
10/10
コリン・ファレルは世界のすべての賞に値する
素晴らしいダークコメディ『スリー・ビルボード、アウトサイド・エビング、ミズーリ』から5年、マーティン・マクドナー監督は、友情、野心、孤独についての素晴らしい物語をまたもや監督した。すべてのシーンに風景が描かれ、色調のバランスも絶妙だ。
映画は3つのアークを軸に展開し、3つとも完璧な結論を持っていて、巧妙に交差しています。これは、あなたが今までに見たこともないような最高のライティングです。3 Billboards』のように、ユーモアと悲劇が完璧にブレンドされています。物語は、親友が自分とは何もしたくないと思い悩むコリン・ファレル、人生の究極の目的を見つけようとするケリー・コルドン演じる妹、最悪の人生を送っているバリー・キーガン演じるドミニクを軸に展開する。
コリン・ファレルはこの20年間、素晴らしい仕事をしてきたが、これは彼のの瞬間である。映画『イニシェリン島の精霊』は、これまでのところ、今年最高の映画であり、商業的にも批評家としても賞賛に値する。万人を満足させる映画は非常に稀だが、これはその一つである。
10/10
私のかわいいジェニー
映画『イニシェリン島の精霊』でマーティン・マクドナーは、演劇的な脚本や主要俳優の演技をはじめ、様々な面で素晴らしい作品を作り上げました。コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、バリー・キョウハン、そしてケリー・コンドン。これは、すべての脇役にも当てはまります
ユーモアが冴え渡り、非常に面白い映画でありながら、意味深長で解釈が難しく、時にはショッキングで予測不可能な展開もある。登場人物と彼らの波乱万丈な人生に共感しないわけにはいきません。上映の終わりには、答えを得る以上に、何か重要なことを学び、目撃したような気がした。深い考察を促す美しい映画です。
8/10
無力さについて考えさせられる話
アイルランドが絶望に満ちていた時代、独立戦争から間もない頃、植民地支配後の劣等感(現在も解決されていない)、アイデンティティを求める戦い、抑圧的な教会、迷信、孤立、大量移住、貧困、そして極めつけに残忍な内戦をもたらした長い苦悩の時代、もっと知りたいと思わせるよくできたダークコメディである。この映画は、当時の心理を見事に表現しており、その上、撮影、衣装、音楽、雰囲気も素晴らしい。一方ではストーリーや前提について考えさせられ、他方ではその唐突さに騙されたような気分になる、この映画自体がちょっとした難問である。
まとめと感想「難解だった」
突然親友に無視されるパードリック、コルムは自らの生命を懸けた芸術作品を生み出すために全ての絆を断ち切って新曲に挑もうとする。だが、このコルムの行動は正しいか?間違っているのか?狂ってしまったのか?認知症の可能性も?本音か?嘘か?などは劇中では一切語られないため最後までモヤモヤが晴れない。
パードリックは確かに良いやつすぎてコルムが少しだけほっといてくれという言葉の意味を理解しないところは苛立つかもしれないが、何があったのかを知りたいのは親友として当然の権利だろう。だからこそ彼は親友の助けになりたいと願うのはダメだろうか?もう一言あったらこんなオチになんねーよ。(だったら映画にもなんねーだろ)となる。
最後にコルムの本音、新曲、2人の確執が全く晴れないので残念だった。海外のレビューを読んでやっと少しだけ理解が深まった。そしてこの映画はダークコメディだったのだという表現を先に知っておくべきだった。
登場人物たちの心理描写が見応えがあると言うべきだろうか、島民同士のユニークなやりとりの中にも巧みで複雑な表情を浮かばせ、見る人を惹きつけるのは監督の腕によるものか劇中でおっさんがめっちゃくちゃ笑っていたのだからきっと”無配慮な人”はこの映画をユニークに楽しめるのだろうか。俺はパードリック側の思考だから何も晴れないまま映画館を出た。
無口なおっさんの『言わなくても察しろ』はダメだろ
と大多数の人が思うのではないかと。
基本的にこの映画はコリンファレルが
突然無視されたことの意味を探りつづける物語なのでかわいそうになります。