ロンドンの人気低迷中の危機に瀕した高級レストランの最悪の一夜を描いた映画『ボイリングポイント』の物語ネタバレを紹介。他の料理映画にはない90分ワンカットでスタッフたち全員の内面まで描くことでレストランのリアルな裏側を描くことに成功、以上な緊張感で描かれる本作を見終わった時、タイトルの「沸点」の意味を理解することになります。
もくじ
映画『ボイリング・ポイント(2022)』作品情報
一年で最も忙しい日にシェフがチームをまとめ上げるが、レストランの厨房の容赦ないそれぞれのプレッシャーを描く。
監督:フィリップ・バランティーニ
脚本:フィリップ・バランティーニ&ジェームズ クミングス
出演
スティーブン・グラハム … アンディ・ジョーンズ
ヴィネット・ロビンソン… カーリー
アリス・フィーサム… ベス
レイ・パンタキ… フリーマン
ハンナ・ウォルターズ… エミリー
マラカイ・カービー… トニー
イヅカ・ホイル… カミーユ
タズ・スカイラー… ビリー
ローリン・アジュフォ … アンドレア
映画『ボイリング・ポイント(2022)』物語エンディングまでネタバレ!
アンディ・ジョーンズ(スティーブン・グラハム)は、ロンドンの高級レストラン『ジョーンズ&サンズ』の料理長である。アンディは”今日も”遅刻して店に出勤している。最近離婚し幼い息子と離れて別居状態だった。追い打ちをかけるようにレストランに無勧告で現れた衛生官の審査によって安全衛生評価で5つ星から3つ星に格下げされたことを知り、困惑していた。
しかし全ての原因はアンディにあり、今夜も大量の予約があるにもかかわらず材料不足をスタッフに指摘される。在庫発注の責任者はアンディでありこのようなミスを連発しているようだった。
その苛立ちを隠すことなく厨房スタッフひとりひとりに難癖とも言えるような怒りをぶつけスタッフたちは不満顔のまま店は開店する。
ダブルブッキング
今夜は危険な夜になりそうだ、ただでさえ予約がいっぱいにもかかわらず、ホール責任者のベス(アリス・フィーサム)の大きなミスで予約のオーバーブッキングをしていたことが判明(しかし彼女の父親はこの店のオーナーであるため常に強気な態度を取り反省の色を見せていない)
さらにアンディとかつての同僚で有名なシェフでセレブのアラスター・スカイとそのゲストである有名料理評論家が参加。さらに、アンディはアラスターに20万ポンドの借金を抱えており、アラスターは私的な損失を補填するために全額支払いを求めているなど今夜の慌ただしさはピーク以上だった。
ディナーの最中、厨房とダイニングルームに軋轢が生じ始める。スタッフも全員が健全ではない、皿洗いの男性はいつも長い休憩で仕事をサボっているため、仲が悪くいつも言い争いの声が聞こえる、アンディにソースの味をこき下ろされたパティシエのエミリーの息子のジェイミーの腕にはリストカットの跡があることを見つけて強くハグする。(その後作り直したソースは誉められOKを貰い笑顔になっているが、アンディは味に妥協を許さない職人なだけなことがわかる)アンディ自身も腕に火傷を負うなど危険な兆候が。
ベスは、厨房のスタッフたちに対して、ひたすら高圧的な態度で接し、困らせる。その結果、ベスはただでさえ過労気味のシェフたちに、この店がSNSでバズることを夢見ているためインフルエンサーのゲストを喜ばせるメニュー外の料理を作るよう要求、さらに調理や質が不十分だと不必要にシェフたちをこき下ろした結果、我慢できなくなったカーリー(ヴィネット・ロビンソン)がベスの人格を全否定する内容で罵る。ベスは泣きながらトイレに引きこもり、電話で父親にこの仕事は自分には向いてないと伝えている。(クソガキが…)
客がアレルギーで病院送り
そんな中、シェフの一人コールドのミスで客がアレルギー反応を起こしてしまい最悪の事態が発生する。開店直後から様子を見ていたが明らかに上手に回っていない店舗の対応に対し事態を重く見たアラスターは自身を新しいパートナーになって借金を返すためにカーリーを首にするべきだと告げる。
ゲストが病院送りになった後、スタッフが集まりミーティングをするが全員が苛立ちを隠せないでいたが、アンディの一方的な非難に今まで黙っていたフリーマン(レイ・パンタキ)はアンディの遅刻やミス、アルコール依存症について非難を始め喧嘩になりそうになるが、カーリーがそれを阻止する。カーリーと二人きりになるとアンディは客がアレルギー反応で病院送りになったのは自分のせいで、シェフのコールドにクルミ油の入った瓶を付け合わせに使うよう指示したことを打ち明ける。
さらにアンディはアラスターがカーリーに責任を負わせクビにしたがっていたことを怒りながら明かすが、我慢の限界のカーリーは涙を流しながらアンディの過去の数々の失敗をカバーし続けてきたことへの不満を吐き出し店を辞めると伝える。
分かった分かった、、とカーリーの言葉を遮るとアンディは事務所に向かう…。
エンディングネタバレ「アンディの自業自得の結果オチ」
アンディは事務所でウォッカをガブ飲みした後、隠し持っていたコカインを吸引する。
別居中の妻に電話をかけ、息子に愛していると伝えてほしい、アルコール依存症の治療リハビリに通うからと涙ながらに懇願する。
電話終了後、我に返ったアンディはコカインのかけらを隠すように捨て、ウォッカをゴミ箱に捨てる。
キッチンに戻ろうと立ち上がったアンディは動けなくなり通路で倒れてしまう(胸を押さえていたので心臓発作と思われる)、画面は暗転しパニックになったスタッフたちの声が聞こえる。彼の運命はわからないまま、「BOILING POINT」タイトルが映し出され、エンドクレジットが流れる。
海外の反応評価IMDb『7.5』
10/10
スティーブン・グラハム
まず、スティーブン・グラハムは歴代の俳優の中で最も過小評価されている一人である。彼はいつも素晴らしく、信頼でき、生々しく、そして強烈に仕事に取り組んでいる。ここでも。彼は再び演技のマスタークラスを行います。
第二に、『ボイリング・ポイント』は、面白い景色、すべてのキャストの素晴らしい連携、有名レストランでの地獄のような夜の1シーンへの驚くべきリアリズムなど、ワンショットで撮影された小さな傑作である。
最後に、もしあなたがちょっと変わったスティーブン・グラハムの宝石をお探しなら、この作品はあなたのためにあります。お楽しみに。
9/10
感動的な夜
スタイリッシュなレベルでは、これは絶対に素晴らしい体験です。トラッキングショット(切れ目なく、トリックなし)で表現することで、脳にアドレナリンが放出され、演技で適切な、神経をすり減らすトーンを得るのに役立っています。
ストーリーについては、小さな亀裂があり、すべてが完璧というわけではありません。しかし、テンポの良さとエネルギーが、そのような欠点を補って余りある。
全体として、スリリングで説得力のある体験であり、万人向けではないにせよ、見ることを要求される作品である。
8/10
不安なこと
なぜ世界はこのことをもっと話題にしないのでしょうか?なんて素晴らしい映画なんだ。時々、「ミサ」を思い出した(本物の人間を見ているかのような信憑性のある生の演技)。時には『アンカットジェム』や『シバベイビー』を思い出した(不安を煽る、狭い空間、カオス、愚かな人々への対応、心の中で叫ぶ)。
フィリップ・バランティーニの監督のやり方が好きです。このシングルショットのやり方は、このようなリアルタイムで起こる速いペースの映画にぴったりで、作りたい不安を作り出すのに役立っています。あなたはそこにいる。あなたはチームの一員です。演技の面では、どの作品も素晴らしいレベルにありますが、中でもスティーブン・グラハムとヴィネット・ロビンソンは、完璧で欠点がありません。この2人のキャラクターが登場しないシーンもありますが、心に残る素晴らしいシーンがいくつもあり、この監督が次に何を見せてくれるのか、とても楽しみです。
まとめ感想:一流レストランの裏側、吹きこぼれたものとは
90分ノーカットなのは凄いと思うがだから偉大な作品だなとは思わないがこの作品は面白い。
ロンドンの高級レストランの裏側を描いた作品なのだが、レストラン関係者全員、ホール、シェフ、洗い場、客まで一人一人の個性も描いており、洗い場の彼以外はみんなバタバタしており緊迫感が伝わってくる、そして主人公のアンディの離婚問題、アルコール、ドラッグ依存症、そして店の想像もできない重圧との戦い、そしてワンカット演出によって本当のレストランの裏側のドキュメンタリー映画を見ているかのような緊張感とリアルさで目が離せず興味深く見ている間に映画は終わってしまった。
ただ、試聴後の恩恵というか、ああ、良い映画見たなーという感覚は薄い。
ここはこの作品を料理映画として見るかどうかで意見が分かれると思うが、私個人として美味しい料理を美味しそうに愛でるのかと勘違いして見てしまったので、この結局のところプレッシャーだろうがなんだろうが店の経営で追い込まれまくったアンディがアルコールとドラッグが原因で離婚してその結果ミスを連発、責任者としての責務を果たせず人を使うこともできない結果、文字通り沸点を超えてふきぼれてしまった店とアンディには救いがないというオチには「えええ…」となってしまったのだった。
今回ボイリングポイントはそのどれでもなく、リアルな緊迫感だけを追求していきぶっ壊れる過程を描いているので劇中試聴中の緊張感が全く途切れないという点ではサスペンス映画という形では良い作品ではあるのか・・。
料理映画といえば個人的に「ディナーラッシュ」と「シェフ」が好きだ。前者はボイリングポイントと同じように人気レストランのたった一夜のさまざまを描いた作品で、少しエンタメ寄りに描いているのでイケメンシェフ、借金抱えたバディシェフ、借金取り、シェフの父親でマフィアのボス、殺し屋、バーテンダー、イケメンシェフと寝た料理評論家など、痺れる個性を持った人たちの騒動を美しく忙しなく面白く描いている。
後者の「シェフ」は少しだけわがままが過ぎて追い出されたシェフが中古キッチンカーで再起する話なのだが、別居中で離婚しかけの嫁と息子との絆の修復と、一つひとつ丁寧に料理の過程を描くことで料理がしたくなる不思議とお腹が空き、メキシコのテンションが上がる古い音楽に合わせて彼らのロードムービーでもある素晴らしい映画だった。
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2024年アメリカ公開映画
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