もくじ
映画『ファミリー・ディナー』の作品情報
- タイトル: ファミリー・ディナー (2022)
- 公開日: 2023年4月7日 (カナダ)
- ジャンル: ドラマ、ホラー、ミステリー
- 制作国: オーストリア
- 上映時間: 1時間37分
- 興行収入: $352,818
- 監督: ピーター・ヘングル
- 主要キャスト:
- ピア・ヒアツェッガー（クラウディア役）
- マイケル・ピンク（ステファン役）
- ニーナ・カトレイン（シミ役）
- アレクサンダー・スラデック（フィリップ役）
ストーリー概要：あらすじ
ふくよかな体型に悩む10代の少女シミーは、著名な料理研究家で栄養士の叔母クラウディアに健康的なダイエットを手助けしてもらうため、彼女の家でイースターの休暇を過ごすことに。しかし叔母の食事指導は思いのほか過激で、さらに従兄弟フィリップはシミーに敵意剥き出しで嫌がらせを繰り返し、得体のしれない叔母の新しい夫シュテファンの存在もシミーを不安にさせる。イースターの祝祭が近づくにつれ、美しい料理に彩られた食卓は悪夢へと変わっていく。
オーストリアの名門ウィーン・フィルムアカデミー出身の新鋭ペーター・ヘングルが長編初監督・脚本を手がけ、家庭内に潜む暴力性、ルッキズム、食と祝祭における宗教観の変化といった題材を、静謐かつスリリングに描き出す。
主要キャラクター紹介
- クラウディア: 専門家としてシミのダイエットをサポートする叔母。
- ステファン: クラウディアのパートナー。
- シミ: 本作の主人公で、体重を減らすために農場を訪れる。
- フィリップ: 農場での生活に関わる重要なキャラクター。
映画『ファミリー・ディナー』物語ネタバレ
ふくよかな体型に悩む10代の少女シミ（ニーナ・カトライン）が叔母のクラウディア（ピア・ヒエルツェッガー）の人里離れた家に到着したところから物語は始まります。
叔母のクラウディアとは、クラウディアの元夫がシミの母の兄でしたが、現在は離婚しており、関係がなくなった今ごろ、シミが来訪したことに少し微妙な顔をするクラウディアでしたが、シミの来訪を快く受け入れますが、イースターウィーク中の滞在は家族で過ごしたいからという理由で、シミは四日間だけこの家で一緒に過ごすことになります。
夜になり、クラウディと、息子のフィリップ（アレクサンダー・スラデック）、新しいパートナーのステファン（マイケル・ピンク）と四人で食事を始めますが、驚いたことに目の前に食事が並んでいるにもかかわらず、ステファンとクラウディアは食事をとりませんでした。何か宗教的な問題があるのか？とシミは問いかけますが、”色々あるのよ”とクラウディアは笑うだけでした。
シミがおばの家を訪れた理由
翌朝、クラウディアが勝手にシミの荷物をクローゼットにしまっていると、中からクラウディアの書いた本が出てきます。そこで、クラウディアは健康を損なわずに体重を減らす方法について専門的な知識を持っている有名なシェフで、彼女は何冊も本を出版してること、シミがここにきた理由は、クラウディアの家で”ダイエットして痩せたい”だったことが分かります。クラウディアは私が導いてあげるとシミのダイエットに協力してくれることになります。しかし、夫のステファンはシミに体重を減らす必要はないぐらい美しいじゃないかとダイエットを推奨はしていない様子でした。
シミが外でランニングをしていると、庭にできていた巨大な薪の山の中からお菓子の入ったリュックサックを見つけます。オーガニックにこだわるクラウディアの家に似つかわしくないその中身に不思議に感じますが、シミは何も言わずに家に戻ります。その夜、遅くまで帰ってこないフィリップが、その薪の山から出てきて両親を心配させるのを目撃します。
その日の夕方待ちに待った食事が振舞われますが、例によって、クラウディアとステファンの前にはお皿はなく、息子のフィリップだけが大盛りのパスタを食べています。シミは自分の皿を見て待っていると、クラウディアは彼女のお皿を下げると、私たちと同じようにあなたも毒素を抜くために断食をしますと提案するのでした。クラウディアの協力を得るためシミは我慢するしかないため、彼女は頷いて水だけを飲みます。
フィリップはなぜお菓子を食べた
翌朝、おそらくフィリップの仕業で、シミのリュックの中にキャンディの包み紙があったとクラウディアに叱られます。シミは自分のものではないと伝えますが、クラウディアに弟子入りした手前何も言えず、二度としませんと誓わされます。それでもシミは食事抜きを続けていると、クラウディアから空腹感を紛らわせるお守りをプレゼントされ、ダイエットに向けてもう少し耐えて頑張ろうと思うのでした。
ある日、フィリップの目が腫れ上がっているのを冷やすクラウディアの姿を見て、クラウディアは彼が何かにぶつけたと言っていますが、シミは寡黙でいつも下を向いているフィリップに何が起きたのか、ひょっとするとステファンに殴られたのではないかと想像してしまいます。夜になると、クラウディアが執筆作業をしている姿を見かけたシミが内容を尋ねると、古代の食事について書いていると教えてくれました。
翌朝、ステファンが狩猟に行こうとすると、クラウディアが、自身の連れ子であるフィリップと仲良くなって欲しいと、フィリップとなぜかシミも一緒に一緒に行くことになります。フィリップはステファンと二人になりたくないと伝えますが、クラウディアは聞く耳を持たず早く行きなさいと背中を押すだけでした。
ステファンとフィリップの違和感
外に出るとなぜか機嫌の悪いステファンの指示でフィリップは、撃ったウサギのとどめを指すように指示しますが、フィリップは手が震えて動けませんでした。だんだんイライラしてきたステファンから守るため、シミがナイフを借りてウサギの首を切ってとどめを指します。フィリップを見限ったステファンはシミだけを呼び一緒にウサギの解体作業を手伝います。
その後、落ち込んでベッドにいるステファンに対し、私だったら家出するよと同情すると、フィリップは突然”私は母さんが恐ろしい”と言い出します。シミはフィリップの被害妄想だろうと相手にしないどころか、そのことをクラウディアにちくります。するとクラウディアはフィリップは人格性障害？が悪化しているの…と深刻そうにシミに伝えるのでした。
朝、シミは信念が強く、目の前に美味しそうなパンがあっても手を出さず、頑張って断食を続けていると、クラウディアが外でこっそり庭に何かを埋めているのを見かけます。気になったシミが埋めたものを掘り出すと、布に包まれた奇妙な人形とフィリップの顔写真でした。少し奇妙に感じたシミは母に何かあったら迎えにきて欲しいと伝えているところをクラウディアに見つかってしまいます。咄嗟になんでもないと伝えてことなきを得ますが、シミが目を離したすきにスマホが隠されてしまい、シミが尋ねても私は知らないとシラを切られてしまうのでした。
フィリップは母親が怖い
クラウディアが家から離れている隙に、シミはスマホを探し回ります。最後に訪れたクラウディアの書斎で、彼女の新刊のアイディア本を見つけたシミは好奇心に負けて覗いてしまいます。するとその中には、彼女曰く”古代の食習慣”とは”カニバリズム”（人肉食）のことだということが判明し、クラウディアはフィリップを食べようとしているのではないか、と恐怖に襲われます。
しかし、スマホもないため何もできないシミは何も知らないふりをして過ごした後、フィリップに自分も逃げたいから助けて欲しいと伝えますが、クラウディアはダメだと拒否をします。するとフィリップが自分の皿をシミに差し出して食べるように伝えると、クラウディアは何度も皿を元に戻すように伝えた後、ついにフィリップを激しく叩き出血させます。その様子を見たシミは涙を流しながら、お願いだから皿を戻してくださいと伝えます。するとクラウディアは何事もなかったかのように、食べなさいと伝え、一度母に告げ口をしたシミを信じて良いのか迷っているようでした。
その日の夜、夕食にはシミがとどめをさしたうさぎが出てきます。変わらずフィリップだけがうさぎを食べていると、シミはついに空腹に耐えか、断食を止めて食べ物をくださいとねだります。しかし、クラウディアは微笑みながら拒否します。すると、フィリップが皿をシミに差し出すのでした。その様子を見たクラウディアはフィリップの顔を強くひっぱたき、唇の傷口を開いたまま食事をさせるのでした。
食後、クラウディアはシミとフィリップにそれぞれ、自分がやっていることは子供のためだ、あなたのためだと泣きながら言い出しますが、シミの心はもう離れているようでした。
フィリップとシミの脱出
皆が寝静まった後、誰も見ていない隙に、シミは鍵を盗み出し、朝6時に駅に逃げる計画を伝え眠り眠るのでした。そして朝、８時過ぎに目が覚めたシミは隣で眠っているはずのフィリップがいないことに気が付きます。庭に出ると、門の鍵を開けた跡があり、フィリップは自分を置き去りにして脱走したことを知ってショックを受けるのでした。そして、捜索を終えたステファンから、フィリップは無事にウィーンにいる実父の家に辿り着き一緒にいることを知るのでした。
そして、洋服と一緒にスマホを見つけたシミがステファンに連絡を取ろうとすると”死ね！豚が！”という辛辣な言葉と、中指を立てた写真が送られてきてさらにショックを受けるのでした。
そしてステファンが家に連れて行ってあげるから荷物をまとめると良いと言ってくれたので、荷物をまとめていると、クラウディアが現れ、ステファンの病気をなおしたかっただけだし、シミの断食も強制したものではなく、あなたが変わりたいと願ったから協力しただけで、一緒に入れた時間は楽しかったよと言い出される。ステファンの裏切りとクラウディアへの申し訳なさから、心変わりしたシミは二人にもう一泊したいと伝えるのでした。
それでも、一応ステファンはいやいや、お母さんのところに帰った方が良いと思うよ？とは言ってくれるのですが、心変わりしてしまったシミは大丈夫だと突っぱねてしまいます。
そして、ステファンは真面目な顔で、これから我が家で行うイースターの行事は最後までやるって約束して欲しいと言われますが、シミは覚悟を決めてOKと伝えます。
夜になり、ステファンとクラウディアは庭に綺麗なテーブルと豪華な食事が用意された席にシミは着きます。それぞれのお皿にステーキが用意されると、約一週間ぶりの食事に三人は笑顔でかぶり付くのでした。久しぶりの食事に満足したシミは、二人にお休みのキスをした後、ゆっくりと寝るのでした。
エンディングネタバレ「ラストの意味とは？」
午前四時、シミはなんとなく目が覚めてしまいます。周囲を見渡すとフィリップがお守り代わりにずっと持っていたナイフが落ちているのに気が付きます。不思議に思ったシミが彼が送りつけてきた中指を立てた写真をよく見ると、中指の横に、ウサギを捌いた時に使った斧が写っていることに気が付きます。
こっそりと倉庫の鍵を破壊して中に入ると、そこには解体されたフィリップの肉塊が転がっていました。驚き怯えていると背後からステファンのがシミの首を掴みます。そして、このことは忘れて、明日の電車に乗って日常に戻るように耳元で囁かれます。シミは頷くほかありませんでした。
ステファンが彼女がいう通りにするだろうとシミを解放しますが、シミはステファンのお腹を何度もナイフで刺して逃げ出します。騒ぎに気がついたクラウディアが外に飛び出し追いかけてきたため、シミは森の中に逃げ込みます。
そして庭のフィリップが逃げ隠れていた大量の薪の中に隠れたシミに追いついたクラウディアが、早く出てきなさい、フィリップは私たちの中に永遠に一緒にいられるのだから幸せです！と叫びながらガソリンを撒き散らします。
すると背後からシミが現れ、ガソリンを奪い取るとクラウディアにぶっかけ持っていたランタンを投げつけクラウディアを燃やすのでした。シミは車の横で倒れているステファンの横に座ると、彼が息を引き取る傍らでクラウディアの空腹を紛らわすお守りを握りしめるシーンで物語は終了します。
海外の感想評価IMDb 5.7/10
7/10 – 食べる
「ダイエットが得意なはずの人が、家族に手助けできるはずですよね？しかし、自分の息子を抑えるのに苦労しているようでは、アドバイスを求めるのに適した人物ではないかもしれません。
全体として、映画の行く先はほとんどの人が予測できるでしょう。正解を予想しても、特別なポイントは得られません。森の中の奇妙な木製の儀式用具も非常に目立ちます。しかし、これは初めて長編映画を手がける監督ですから、多少の甘さは許されるかもしれません。
演技は良いですが、かなり控えめです。意図的だと思われます。狂気はありますが、もっとあってもよかった。全体に一貫性はありますが、もっと良い意思決定があってもよかったです。関わる全員からですが… とにかく、流れに任せるか、放っておくかです。」
8/10 – 素晴らしいミニマリスト映画
「この映画の固有の雰囲気が窒息するようでなければ、新鮮な息吹と呼ぶことができるでしょう。
一部の非常に否定的なユーザーレビューには困惑します。これはハリウッド映画ですか？実際のホラー映画ですか？どちらも違います。非常にヨーロッパ的な映画です。派手さはなく、特殊効果もありません。ただ、じわじわと緊張感が高まり、不安が募るだけです。冷たいセットと照明が、迫り来る悲劇の感覚に貢献しています。
太り気味のシミは、痛々しいほど痩せた叔母クラウディアとそのパートナーステファンの間で、巧みにアウトサイダーに見えるように演出されています。クラウディアは有名な栄養士で、シミは彼女にダイエットの手助けを期待しています。しかし、クラウディアのテクニックは少し極端になり、彼女の精神状態も同様です。
ゆっくりとしたペースですが、最終的には非常に緊張感が高く、恐ろしいもので、中心的な演技は非常に強く、繊細です。ぜひ観てみてください。」
7/10 – 夕食に残りますか？
「四旬節の断食の終わりに、ぽっちゃりした少女が、彼女の農家に住む専門家の叔母を訪ねますが、何かが少し…変です。
グリム童話と穏やかなボディホラーの出会いです。物語はかなり平凡です – 森の中の邪悪な魔女と置き換えれば、ほとんどの道筋ができあがっています。しかし、イエスの犠牲と共食いの儀式としての概念、さらには動物の死に対する飾らない描写により、ボディホラーの側面が品位を持っています。私のジャンルではありませんが、この形ではフランスやカナダの映画で何十年もの間、定番となっている派手なものよりも「上品」です。
ペースは落ち着いており、演技は控えめで、音楽はほとんど気づかないほどですが、恐怖感を少し煽ります。時々、ささやくような声の親密さは強烈で、素晴らしい効果です。しかし、私にとっての目玉はシミのキャラクターです。彼女は無表情な無邪気さと野生の耐性という興味深い混合を持っています。
これはオーストリアの制作ですが、スラブの隣国はこの種のマクーブルをより不思議で神秘的、そしてユーモアを持ってやっています。そして最後の奇妙な点は、ドイツ語の「シャイセ」が英語でより強い言葉に翻訳されていることです。
全体として：シンプルなストーリーがちょうどその衣装を埋めています。
P.S. 私は断食と低炭水化物を実践していますが、明らかに作家は調査を考えていませんでした。」
7/10 – 田舎の穏やかなホラー
「家庭的なホラー映画として宣伝され、その雰囲気と場所はとても良く描かれていました。アクションに関しては、全編がオーストリアの田舎の農場で展開され、俳優たちは非常に説得力があり、適切に選ばれています。ピア・ヒアツェッガーはもちろん、叔母役として素晴らしく、非常にリアルでした。
私にとっては、この映画をホラーと呼ぶには強すぎます。ジャンルには当てはまりますが、今日の一般的なホラー映画に比べると、むしろ無害で、もっと心理的なスリラーです。また、映画はあまり驚きを提供しません。
ストーリー：太り気味のティーンエイジャー、シミは、田舎の栄養専門家である叔母クラウディアを訪れます（ダイエットの手助けを期待して）。新婚の叔父ステファンと、叔母の最初の結婚からのいとこフィリップもいます。シミは最初から居心地が悪く、いとこは気味が悪く、叔母は厳しく、叔父は親切すぎる?
「ゲット・アウト」や「ウィッカーマン」、さらには60年代のハマー映画に影響を受けたように感じます。これ以上は明かしませんが、映画を通して何が起こるかは確かに予測できます。それが私が予想外と言った意味です。ストーリーを変え、あなたの認識を問い直させるようなひねりが欲しかったのですが、そのひねりは来ません。結論：よくできていますが、最高ではありません。」
まとめと感想と考察
全体的にずっとスローペースで、悪いことが起きそうで、起きなそうで、フィリップがやたらとクソ野郎で攻撃的で、ステファンが良いやつで、クラウディアは良いやつなんだけど、ステファンにひたすら飯を食わせ続けたりと、終始違和感はあるんだけど違和感の正体が掴めないまま物語は続く。
展開も穏やかに進むが、展開と脚本が良いのか、いや、シミの演技が良いのかも、彼女の心境も理解でき、彼女が感じる違和感と心変わりと、心の乱れも理解できて、映画全体を通して見ることを楽しめた。
ラスト、彼女が息を引き取るのを見るとき、お守りを握るシミの仕草は、彼女が今、まったく新しい種類の飢えを抑えようとしている可能性を示している気がする。殺したことに快感を感じたことへの飢えか、一週間断食して食べたフィリップの人肉を食べたいという衝動かもしれない。この余韻が最高に痺れて面白かった。
2024年アメリカ公開映画
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