映画『理想郷/The Beasts(2023)』物語ネタバレと海外の感想評価、実際に起きた元ネタ殺人事件紹介




「映画も怖いが実際の事件も怖かった」世界で絶賛された映画「理想郷/The Beasts」物語エンディングまでネタバレと海外の感想評価、そしてこの映画の元ネタとなった実際の殺人事件の内容も紹介。理想の暮らしを求めて移住してきた二人の夫婦に襲いかかる地元住民による悪質な嫌がらせは次第にエスカレートし…

胸糞悪いですが、全編を通して常に緊張感が走りこの映画がなぜ世界で賞賛され数々の賞を受賞したのかが分かる傑作ホラーです。

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映画『理想郷(2023)』物語ネタバレ

スペイン、ガリシアの田舎町

自然とのつながりを求めて小さな村に住み着いたフランス人夫婦のアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)と妻のオルガ・ドゥニ(マリナ・フォイス)は、農薬を使わず環境に優しい作物を栽培し、放棄された土地を再生する作業を日々行っていますが、突然やってきて時代に逆行する(ように地元のスペイン人たちには見える)ような生活を行う二人の行動は理解できないようでした。

風力発電設立での対立

ある日、町内会議で粗暴なアンタ兄弟のシャン(ルイス・サエラ)と事故の影響で精神年齢が低いまま大人になったクズのロレンツォ(ディエゴ・アニード)を含む町民たちとの話し合いの中で、この町の土地を風力発電会社に売却して金を手に入れたい町民と、売却に断固反対するオルガとアントワーヌの間で対立が始まります。

その日を境にアンタ兄弟によるアントワーヌ農場への不法侵入と除き行為、敷地内で小便など嫌がらせが始まります。嫌がらせを受けていることを警察に報告しても移民のアントワーヌよりも町民の警察は町民やる気はなく、話し合いで解決すべきだと主張して介入を拒みます。

アントワーヌは彼らの行動の証拠を記録しようと、兄弟に会いに行ってはこっそり盗撮をするが始めますが、兄弟はすぐに気がつき嫌がらせが加速します。ある日、突然枯れ始めた野菜たちの原因を調べ、井戸から2つのバッテリーが捨てられており鉛で水が汚染されているのを発見します。
怒り狂ったアントワーヌは兄弟の家に文句を言いに行きますが、彼らは銃を持って不法侵入をやめろと脅し始めました。流石にアントワーヌは退散しますが、カメラに収めた彼らの粗暴な態度を警察に見せます。しかし警察は客観的に見てバッテリーを落とした証拠は無く、彼らは確かに銃を脅したかもしれないが、先に不法侵入したのはアントワーヌの方であり、互いに問題があると言われアントワーヌは絶望します。

オルガは遠回しに攻撃的な解決以外の方法を提案しますが、アントワーヌはもう逃げ道はないと断固兄弟の嫌がらせに対抗していく姿勢を示し、収穫物のために井戸をきれいに清掃して立て直しを図ります。

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唯一の理解者の死、そして

ある日、アントワーヌに優しく接してくれた唯一の村人で、一緒に風力発電所建設に反対していた羊使いの老人が亡くなります。アントワーヌ夫婦は老人の息子と話をしますが、この土地に興味はなく、金が手に入るのならと建設に賛成する方針を示します。アントワーヌとオルガはなぜそんなことを、と聞くと、この土地の住民は二人と違ってこの痩せた土地で生きてきてこの土地しか知らない、しかし、あなたたち夫婦は移住者でよそ者で金と知識があるから土地を守ろうなんて言えるのだ、住民たちには生きていくために金が必要なのだ。そう言われ、何も言い返せませんでした。

その帰り道、アントワーヌとオルガの車を遮るように、兄弟の車がふさいでいました。彼らは執拗に窓を開けるように指示してきますが、アントワーヌたちはその指示を無視して車を退けるように言い続け、渋々車に戻った兄弟は車をどかします。無事に帰宅できたオルガは、自分がいなければアントワーヌが殺されていたと思い、身の危険を感じていると言います。

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エンディングネタバレ「誰が殺した?」

アントワーヌは地元のパブで兄弟に、風力発電所の投票で反対が自分たち夫婦だけなら、多数派の意見を受け入れ村を去ること、しかし兄弟たちの嫌がらせで収穫物が汚染してしまったので立ち去るための収入を得るために一年だけこの街に居させてほしいと伝え、兄弟たちと別れます。

農場の森で犬を散歩させていたアントワーヌは、兄弟が無言でずっと尾行していることに気がつき、悪い予感がしたアントワーヌはカメラをセットして話し合いに応じようとしますが、彼らは無言でアントワーヌに襲いかかると窒息死させます。

アントワーヌの失踪は未解決のまま一年が経過しましたが、オルガは一人で農場を切り盛りしながらアントワーヌを探し町中を探し回ります。ある日、アントワーヌとオルガの娘マリー(マリー・コロン)がフランスから訪ね、父を殺した犯人の近くに母が住んでいることに不安を感じ、国に帰ろうと伝えますがオルガは拒否し娘を帰国させます。

ある日、オルガは森の中でボロボロになったカメラを発見し、そこに写っていた証拠を警察に提出したそのあしでオルガは兄弟の家を訪ね、訝しむ兄弟たちにあなたたちはもうすぐ刑務所に行くことになると伝えると、奥にいる年老いた母親に”息子たちはもうすぐ刑務所に送られる、あなたも私と同じ村で孤独な女の一人になる、私は隣に住んでいるから助けが必要ならいつでも訪ねて”と伝え立ち去ります。

別の日、オルガは夫の遺体が見つかったと訪ねてきた警察の車に乗って警察署に向かう途中、兄弟の母親が一人道路を歩いているところ姿を見て、少しだけ微笑みを浮かべ、物語は終了する。

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海外の感想評価 IMDb 7.5/10「傑作」

7/10
人生の夢が失敗に終わるとき…

妻と私は、『 理想郷』(英語タイトルは『The Beasts』)を、この物語が私たちの身の回りで起こっていることかもしれないと、特別な興味を持って観た。私はベルギー出身で、現在はスペインに住み、オリーブとアーモンドを栽培している。映画の中では、すべてがガリシア地方(北部)で起こっているが、私はアンダルシア地方(南部)に住んでいる。映画では風力タービンが大きな役割を果たしていたが、ここではソーラーパネルの話だ。そう、私たちの生活で起きていることとよく似たことが起きている、興味深い映画だった。特に演技が素晴らしく、このスロー・バーン・ドラマ/スリラーの一番の見どころであることは間違いない。最後がもう少し納得のいくものであればよかったのだが。

9/10
素晴らしい

ロイス・パチーニョ、オリバー・ラッセ、エロイ・エンシソの映画をいくつか観ただけの私のガリシア映画に関する限られた知識に、今日、ロドリゴ・ソロゴエンの『理想郷(原題) / As bestas』を加える。友人たちの貢献と、あらゆる面を映し出し、同じようなものを何度も何度も提供するロサンゼルスの悪質な映画とは違う、より価値のある映画を求める私自身の探求のおかげで、私はこの作品をオルタナティヴなオファーに加えた。
ハリウッド版『ピノキオ』や『アバター』のような戦争への呼びかけを見るよりも、ガリシアの田舎町で、貧乏人や大富豪の食卓を支えている農民たちの、強く、厳しく、荒々しい物語を見る方が好きだ。
民族学、文化的アイデンティティ、経済、国籍、移民、ジェンダー、外国人嫌悪、犯罪、まともな労働と生活水準に対する権利といった要素を組み合わせた劇的な論考となる。ストーリーはアリストテレス的な構造に従っているが、ある時点で注目の中心がフランス人男性からその妻に移り、妻がドラマを理性的で合理的な結末へと導く。
「As bestas』は、プロの俳優と自然体の俳優が見事に融合したキャストの演技も素晴らしい。サン・セバスティアン国際映画祭、シカゴ国際映画祭、東京国際映画祭で受賞した、お勧めの映画である。

9/10
世界は獣で溢れている

北から南へ、東から西へ。外国人が嫌いな獣、地元の人間でない者が嫌いな獣、同じ言葉を話さない者、同じ宗教を持たない者、同じ政治的意見を持たない者、同じ髪型をしていない者、いい車に乗っている者、不細工な車に乗っている者などなど、これらの毒蛇は自分たちの小さな心の領土を他者から意地悪く守る。山奥の田舎だけでなく、仕事場、学校、大学、工場、オフィス、スポーツクラブ、バー、政治集会など、いたるところで、彼らは誠実で平和な人々の生活を毒している。
人生を愛し、家族を大切にし、誰も妬まず、そして法律を執行する。
ロドリゴ・ソロゴエンとスペインとフランスの優れた俳優たちに感謝したい。

8/10
素晴らしいスローバーナー

すごい!全く期待せずにこの映画を観に行ったが、実際はちょっと吹っ飛ばされた。スリラーのスロー・バーナーとして実に素晴らしい。ガリシア山脈を舞台にしたこの映画は、田舎の村に定住するフランス人の引退した夫婦を描いている。しかし、彼らの存在は地元の2人(兄弟)を怒らせ、彼らは夫婦に敵対的な態度を取り始める。そこから事態は徐々にエスカレートしていく。
映画は最初から最後まで、本当に、本当に緊迫している。予測不能で衝動的な兄弟のせいで、いつ何が起きてもおかしくないという感覚を観客は覚える。映画はそれを最大限に利用しながら、家事をする夫婦をしっかりと追い、サスペンスフルな雰囲気を作り出している。全体的に演技が素晴らしく、撮影も素晴らしい。多くのシーンの背景に美しい山並みが映し出され、ただただ目を奪われる。
かなり長くてスローな映画なので、人によっては少し不快に感じるかもしれない。しかし、サスペンスのようなスローな展開が好きな人は、ぜひ見てほしい!

10/10
完璧

カンヌ国際映画祭でロドリゴ・ソロゴエン監督の『アス・ベスタス』のプレミア上映に参加させてもらったが、まだ血が騒いでいる。これほど緊張とドキドキを感じた映画は『ウィップラッシュ』以来だ。観客の反応と約6分間のスタンディングオベーションを見る限り、私だけではないはずだ。
映画は、ガリシア山脈の田舎の村に引っ越すことを決めたフランス人の引退した夫婦の物語を扱っている。しかし、彼らの村への愛と熱意は、そこにずっと住んでいる地元の家族からの虐待的で反感的な抑圧によって満たされる。ルイス・サヘラとディエゴ・アニドが完璧に演じる2人の兄弟は、”フランス人 “の知的水準の高さに腹を立て、夫婦の生活を生き地獄に陥れるために時間を費やす。
この完璧な出来栄え、見事な脚本、気品ある演技で、スペイン映画は再びその広さと基盤を証明した。必見。

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元ネタ「サントアージャ殺人事件」とは?

映画『理想郷(原題:The Bestas)』は、ロドリゴ・ソロゴイェン監督によって制作され、フランスのカップルがガリシアの田舎の村に移住する物語を描いていますが、この映画冒頭で紹介されたように実際に起きた殺人事件”サントアージャ殺人事件”が大まかな基になっています。

マーチン(本人)Quincemilより

1997年、ドイツ出身のオランダ人マーチンと妻マルゴはサントアージャという田舎の村に移住します。村と言ってもこの村には2軒の家しかなく、マルゴ夫婦と隣人ロドリゲス一家(夫マヌエル、妻ジョビータ、2人の息子、フアンとフリオ)が住んでいる過疎化した集落でした。

当初は隣人同士仲が良かったのですが、先祖代々この土地に住んでいたロドリゲス一家による共有地を独占したり所有権にクレームをつけたり、互いに納得して始めた松の販売ビジネスに関する金銭トラブルなどが起きたところから両家の対立が生じまります。

寝静まった夜や留守の時を狙うロドリゲス一家の嫌がらせに辟易したマーチンが家に防犯カメラを設置して対処を続けていましたが、その行為もロドリゲス一家の嫌がらせに火に油をそそぐことになります。

そして、2010年1月19日、マーチンは買い物のために家を出たまま失踪してしまいます。映画の通り妻のオルガは彼の失踪後、何ヶ月も彼を探し続けましたが、一切の手がかりは見つかることはありませんでした。

それから4年後の2014年、家から12キロメートル離れた森の中で、部分的に焼けたマーチンの車と頭蓋骨が発見され、鑑識の結果頭蓋骨がマーチンだと分かります。

警察が本格的に動き調査の結果、殺害の実行犯は兄フアン、弟のフリオは殺害を知った上で遺体を隠した罪で起訴されます。フアンは10年6ヶ月の実刑、弟のフリオは親族間の犯罪による隠蔽に関してのみの起訴だったため刑事責任を免れ即釈放されます。2019年の時点でフリオは週末になると家族と過ごすための保釈を受けられるようになっています。

そして現在、未亡人となったマルゴは引っ越すことなく映画と同じように、一人でサントアージャで暮らしています。しかし映画と違い彼女のもとには自然体験を求める若い学生など、多くの訪問者が訪れて賑やかに暮らしています。夫マーチンの遺体は、彼が夢を抱いて訪れたガリシアの風景を望む小高い丘の上に作った墓に埋葬されています。

ちなみに、この”サントアージャ殺人事件”はドキュメンタリー作品として映画化されたことがあり、現在Amazonで購入可能です。

ドキュメンタリーなので、この予告に出てくるリアルな映像は、実際にマーチンがロドリゲス一家との対立を記録するために生前に撮影したものです。映画のように道を塞ぐトラック、カメラを向けた途端に暴力を振るう映像など生々しく閲覧注意です。

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まとめと感想「怖く不思議な映画」

冒頭で野生の馬に掴み掛かりはがいじめにして捉える村の男たちの姿、そして最後に殺されるアントワーヌの姿が重なった瞬間悲しみに囚われて動けなくなった。そして海外版のポスター↓

は捕まった野生の馬、アントワーヌの姿が描かれている。

なるほど、すげぇ、見終わった後にこのポスターを見て再度震えたのは言うまでもない。最初はなんとなく危険な印象を持っただけだっただけに衝撃はすごいとしか言いようがない。

映画は全体的にスローペースでフランスからスペインの田舎に移り住んだ夫婦と対立する村人たちの最悪の結末までの物語を描く。一方的に住民たちの嫌がらせを受けるフランス人夫婦の恐怖を描いただけだと思っていただけに、羊飼いの老人の息子が村の住民を代弁しているかのように、環境を守りたいから風車を取り付けたくないと反対する夫婦に対し、外の世界を知っていて生きる術と金を持っているお前らには俺たち地元民の考えを理解することはできない。とバッサリ切るシーンがあり、これが最初の衝撃だった。

ご存知の方も多いとは思うが私は頭が悪い。結構、聞き分けも悪いし、我が強い、考えるよりも感じろ派、直感型で短絡的、要するに単細胞である。だから冒頭はフランス人夫婦が善で住民が悪の構図を勝手に描いていたのだが、どちらでもない息子からすれば余所者のフランス人夫婦ってマジで理解できない鼻持ちならない金持ちの言葉にしか捉えることができないという意見に

「あ。」

と声が出そうになってしまった。

地球連邦軍とジオン軍のような一方的に善悪では割り切れないと言うこと(ガンダムは賢い友人が色々と情報を補填して気付かせてくた)もしっかりと描かれていること、これは私のようなステレオタイプな人種に向けた監督からの優しいメッセージのように感じた。

それから間も無くアントワーヌが殺され、やっぱり悪じゃんと思ったら、いまいち理解できない兄弟とそれでも息子たちを信用する母の姿、そしてわざわざ孤独を思い知れと伝える妻オルガ、そして最後の微笑み…

見終わった後に、思わず考えてしまい(もちろん私の場合考えるフリで悩むだけだが)うわあ、良い映画見たなこれと唸ってしまった。

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