「吐き気がする程のハリウッドの闇を刮目せよ」映画『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』物語結末までネタバレ。ジャーナリストの女性二人はなぜこの話を取り上げたのか?被害者はなぜ沈黙するのか?なぜ被害者を守る法律があるのか?最後に笑ったのは誰なのか?全ての真相が明らかになります。
もくじ
映画『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』ネタバレ
1992年
海辺にある映画制作現場の女性アシスタントは幸せそうに仕事をこなしているシーンの直後、その女性はシャツを羽織っただけの薄着で泣きながら街の通りを走り続けていた。
2016年、ニューヨークタイムズのジャーナリスト、ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)は、若い女性レイチェが大統領選に立候補しているドナルド・トランプに反対していると言質を取るも、レイチェルは名乗った後に訴訟された場合の費用をニューヨークタイムズが負担してくれるか聞くがミーガンは冷静に弁護士費用の援助はできないと伝える。しかしレイチェルは、自分一人ではどうにもならないが、何人もの女性が賛同してくれれば安心だと言い自分の意見を正式に記録に残すことに同意する。
ニューヨーク・タイムズ紙のジャーナリスト、ジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は2人の幼い娘の世話をしながら仕事の準備をしているが大変そうに見える。
ミーガンのもとにトランプから彼女の発表した記事の証言は全部嘘だと否定する電話が入る。翌日にニュースになったことでミーガンの情報源であるレイチェルはさまざまなメディアが彼女の家を監視し始めてしまいミーガンに助けを求めてくる。さらには殺して川に遺棄してやると脅迫電話までかかってくるのだった。
Fox Newsがドナルド・トランプが大統領に就任したことを発表する。ジャーナリストのジョディは切り替えて別の記者と一緒に、ハラスメントを受けた女性について執筆すると編集者のレベッカ・コーベット(パトリシア・クラークソン)は、彼女の仕事を称賛する。
ハリウッドの闇、ワインスタイン
ジョディとレベッカは、企業の権力の乱用やハラスメントが起こりそうな職場という新しいテーマで歩み始める。早速情報を集めようとするとフェミニスト団体の代表からハリウッド映画業界ボスでプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインについて情報提供してもらう。
ワインスタインは、別のイタリア人モデルから商談中にワインスタインに体を触られたと訴えられておりNYPDから捜査されていたが彼は起訴されなかったことを知る。ジョディとローズはワインスタインと過去に仕事をした女優や元スタッフを追跡するが雲隠れしたかのように誰にも話を聞けずにいた。
突然ローズ・マクガウンから電話が入り、彼女が23歳の時、サンダンス映画祭でインディーズ映画を出るためにワインスタインに呼び出されてジャグジーのある部屋に押し込まれてレイプされたこと。その後、ワインスタインはローズを”特別な友人”だとメッセージを残したこと。警察は助けてくれないと思い被害届を出さなかったこと。人に話したが誰もワインスタインに怯えて何もしてくれなかったことを赤裸々に話してくれた。
沈黙する被害者たち
ジョディは女優のアシュレイ・ジャッドからビジネスミーティングのはずが、ワインスタインにマッサージを頼まれたり、シャワーを見ていて欲しいなど性的な要求を繰り返してきたが何度も何度も断り続けた結果、ワインスタインから映画の候補を外されたと伝える。そして自分は余裕があったから断れたが、多くの若手女優はこの手で嫌がらせをされていると言う。
オフィスでミーガンとジョディは、女優と違ってプラットフォームを持たない従業員たちにも話を広げようと話し合う。ミーガンは、ワインスタインのミラマックス社に対する警察からの苦情や裁判記録を検索してみるがなぜか記録は破棄されていると電話を切られてしまう。
ミーガンはミラマックスから姿を消した昔のアシスタントを訪問し、ワインスタインの件について聞こうとするが彼女は態度を変え言葉を選びながらその件については、話し合わないと追い出されてしまう。他の元従業員の女性もワインスタインの名前を出すだけで扉を閉められてしまう。彼に関わった女性は発言を極端に恐れ関わりを持ちたくないということだけが分かっただけだった。
ある日、ジョディは女優のグウィネス・パルトロウから電話を受け、かつて23歳の時にワインスタインは”商談”という名目でグウィネスをホテルに招待すると、私の望みを断れば仕事を失うと脅された話を聞く。
さらに、イタリア人モデル アンブラ・バティラーナ・グティエレスから、ハーヴェイ・ワインスタインが彼女をホテルの部屋に無理やり連れ込もうとする生々しい録音記録を聞かせてもらう。
アメリカでは、被害者の弁護人は和解金の最大40%を手にすることができため多額の報酬を手にすることができる。なのでセクハラ事件の多くは和解金で沈黙を獲得できる。もちろん和解金を得るために被害者は証言や証拠になるような日記、メール、録音をすべて渡さなければならない。喋れば訴訟されるため、沈黙する以外に道は無くなるのだ。
タイムズ紙の編集長ディーン(アンドレ・ブラウガー)は、ワインスタインのコメントはすべて記録に残し、彼との会話はすべて録音されていると考えるようにと助言する。
ジョディは慌てたグウィネス・パルトロウから電話を受ける。ワインスタインが彼女のハウスパーティーに突然現れ圧をかけてきたと言うのだった。
ジョディは、元ミラマックスの従業員に会うことができた。そこで彼女からロウェナ・チャン、ゼルダ・パーキンス、ローラ・マッデン、この三人の女性に会うべきだと教わる。
ジョディはロウェナの家に行くが、彼女は不在でミラマックスで何が起きたのかを全く聞いていないロウェナの夫に、奥さんが何かの犠牲にあっている可能性があると軽く事情を話したことで余計に混乱させてしまい戸惑う夫にロウェナ宛の手紙を渡してほしいと伝えて立ち去ることしかできなかった。
ジョディはローラ・マッデンに電話をするがワインスタインの名前を出したことで電話を切られてしまう。
ゼルダの証言
ジョディは最後の一人ゼルダと会うことができた。
ゼルダは、以前にもこの話を書こうとした人がいたが、ワインスタインがそれを防いでしまうと話すが、ジョディはそうならないよう全力を尽くすと断言する。
そしてゼルダはNDA(秘密保持契約)のため、ベネチア映画祭での経験をすべて話すことはできないと前置きした上で、ロンドンでのある朝、ホテルの外でゼルダの友人のロウィーナが泣いていた、詳細は聞いていないがワインスタインから虐待を受けたと気付いたゼルダはスコセッシ監督と会議中のワインスタインに立ち向かい彼女にしたことについて尋ねるが”妻と子供たちに誓って何もしていない”と言うだけだったこと。
ロウィーナとゼルダはロンドンに戻り弁護士に電話したが、彼女たちにチャンスはないのでさっさと和解しろと言われた。警察はレイプの場合、起訴は不可能だと言い、示談しかないと言われたこと。
それでも諦めずにある条件にまで持ち込み署名したが、ワインスタイン側は署名のコピーを渡さず、善処すると言われるだけで逃げてしまうという最悪の終わり方をしてしまう。一連の出来事からゼルダは映画界から離れていることを伝えると、ジョディに自分が持っていた書類をすべて渡して立ち去るのだった。
ジョディはかつてミラマックス社で制作アシスタントをしていた女性ローラ(冒頭の泣いていた女性)と会って話を聞くことができた。
映画制作に夢を持ち働いていた彼女は92年のある朝、全裸の彼はマッサージを要求してきたので断ると性的なことじゃないし、女の子はみんなやっている、ただの仕事だと。そして彼は、彼女に上半身を脱ぎ、ブラジャーを外し、ズボンを脱ぐように命じられ言われた通りのことをしたと話す。それでも彼は自慰行為を続けたこと、シャワーを浴びながら触れられ続けローラが泣き続け、声の大きさに苛立ったワインスタインは外に出たのでローラは服を掴んで走って逃げたことを話してくれた。
ローラは自分のしたことを悔やみ恥ずかしがり、他の女の子はもっと心が強く彼を拒んでいるのだと思い込んでいたことを聞く。
会計士の告発
ミーガンとジョディは、タイムズのオフィスに現れたワインスタインの弁護士、ラニー・デイヴィスに会う。彼は、数々の訴えがあるようだがワインスタインは断固拒否していること、何も犯罪性がないことを主張し、要するに和解を要求してきた。別れた後ミーガンとジョディは和解をこんなに早く提示してくると言うことはワインスタインが追い込まれている証拠だと確信を得る。
ジョディは夜中に匿名の電話を受け”以前ミラマックスで働いていた、アーウィン・レイターと話してください “とだけ言うと電話を切られてしまう。
ジョディは早速連絡を取りミラマックスの会計士アーウィンと出会う。彼女はレイターに示談の確認と会社の金が使われたかどうかを尋ねる。レイターは去る前に、最近も多くの和解があったのに、なぜわざわざ90年代の和解に興味を持ったのか?と問われジョディは驚く、最近にも和解が行われ示談金が支払われている?
後日、ミーガンは例のホテルに連れ込もうとしている録音記録を渡す条件でアンブラ・バティラーナ・グティエレスが8〜12桁(10億円以上)の和解金を手にしたこと、録音はワインスタインが所有している話を弁護士ラニーから聞く。
ゼルダの友人ロウィーナから突然ジョディに電話が入り二人はニューヨークで会う。
ワインスタインの下で働いていたある夜、ロウィーナは彼と台本やノートを見直していたが段々と彼女の体に触れ続け嫌がり続けたが、彼はロウィーナをまるでゲーム感覚のように体を押さえつけ、”一突きだけさせてくれ “と言われ・・・。
彼女は飛び出しゼルダの部屋へ行ったこと、その後はゼルダと同じように、彼女もまた圧力を受け仕事を見つけることができなかったこと、ロウィーナは香港のワインスタイン・カンパニーで仕事をすることになったが、トラウマになり自殺を図ろうとした話をする。
ジョディは会計士レイターと再会して女優の名前を隠した状態でワインスタインがどのような暴行を加えたかを詳細に記した文書を読ませる。
レイターは読み進めるうちにそんなことはしていないと思っていたと話すと携帯電話の画面を見せ “好きにしてくれ “とトイレに向かいジョディは画面をスマホで何枚も撮影する。
それは2015年にミラマックス社で回覧された、元社員からのワインスタインに対する虐待疑惑を詳細に記した社内メモで、ミラマックス社のローレン・オコナーがワインスタインの職権乱用について詳細に詳述していた内部文書だった。
エンディングネタバレ
しかし数多くの証言を得たが、名前を出すことを恐れているため、拒否されていた。このままでは勝てない可能性があると悩む二人に女優のアシュレイ・ジャッドからの電話が入り、女性としてクリスチャンとして、自分の名前を記事に載せることに同意すると言われる。
ジョディは涙を流し感謝して電話を切ると、ミーガンに”彼女は言ったよ(she said )”と伝える。
ついに許可をもらいジョディとミーガンは記事を書き、ニューヨークタイムズはアシュレイ・ジャッドのペニンシュラ・ホテルでの体験談を中心に記事を発表。2017年10月5日のことだった。
ワインスタインとミラマックス社は、バラエティ誌とハリウッド・リポーター誌で声明文を発表し、告発に同意した女優たちの信用を失墜させようと行動していた。
そこにローラからNDA(秘密保持)にサインしていないので記事に名前を出しても良い、私も声を挙げたいのと電話が入り一気に風向きが変わる。
それから、世界中で女性たちが次々にワインスタインに対する過去の仕打ちを暴露し始め世界的に意識の変化が起こり始め、女性に対する意識改革、職場改善、暴力行為に対して現在も議論が続くほど大きな影響を与えるきっかけとなった。
記事が出た2017年10月にワインスタインは解雇され、ニューヨーク死刑に過去の強制暴行、強姦、性的犯罪行為、虐待行為で23年の禁固刑を受け現在も収監されている。さらに2003年から2014年で行った11の犯罪行為でも起訴され現在も裁判は続いている。
ワインスタインが行った数々の暴行の詳細はウィキペディアで閲覧可能
海外の感想評価 IMDb:7.2/10
8/10
終わりのないディスクロージャー…
この作品は、勇敢な人たちの物語であり、虐待と傷害の物語であり、とても非道であり、卑劣な肉食動物が檻に入れられ、忌まわしい、悪、凶悪、そして非常に粘性のある人なので、怒りと激怒を感じるでしょう。ジョディとメーガンは、これらの出来事に蓋をし、不穏な内容の蜂の巣を明らかにし、事実に即した虫の缶詰を見せ、あなたを興奮させ、もがき、あなたの鬱憤を吐き出すように画面に向かって叫ぶことだろう。
一人一人の虐待は決して珍しい話ではないが、一人の個人に対する虐待が徐々に積み重なっていくにつれ、権力と金が何をもたらすのか、特に隠すことができるのか、密室の中で本当は何が起こっているのか、影響を受けた人々は自分の過去と折り合いをつけることができるのか、と疑問を抱くようになる。
キャリー・マリガンとゾーイ・カザンの演技が素晴らしく、彼らの仕事に対する執念と情熱が光っています。
8/10
タイムリーな話題を取り上げた、手堅い捜査ドラマ
この映画は、ワインスタインのスキャンダルに関わる多くの人物とトゥヘイとカントーのやり取りを描いている。劇作家レベッカ・レンキウィッツの脚本は、これらの生存者の物語に命を吹き込み、実際に何も映さない代わりに、空のホテルの廊下や部屋を映して雰囲気を盛り上げるという堅実な仕事をしているが、特にアシュレイ・ジャッドが自分自身を演じ、ワインスタインの手による虐待の物語を語る際には、インパクトが少なくないだろう。マリア・シュレイダーは、映画をテンポよく進めるのが上手で、決して長引くことはなく、すべての俳優がこの素材にふさわしい堅実な演技を見せている。
She Said』はよくできたプレステージ映画であり、搾取に走ることなく、新鮮で関連性のあるテーマを尊重し、センスよく扱っている。この映画は、権力者による虐待の蔓延と、それがワインスタイン自身だけの問題ではないことを力説しており、ワインスタインをほとんど背景か電話の声として登場させるという賢明な演出がなされている。スポットライト」や「ザ・ポスト」など、この種の実話映画がお好きな方は、ぜひチェックしていただきたい一本です。
9/10
信じられないような、重要なドラマ
ハリウッドとその権力の乱用、そして間違った人々を守るための手段を痛烈に批判しながらも、難しい題材と事実に基づいた出来事を繊細かつ丁寧に扱った、驚くべき重要なドラマである。
キャリー・マリガンとゾーイ・カザンが素晴らしい演技を披露し、キャラクターに多くの層を与え、二人の相性は抜群だ。また、サマンサ・モートンとジェニファー・エールなど、印象に残る優れた脇役の演技も満載です。
マリア・シュレイダーの演出は素晴らしく、この映画には多くの視覚的スタイルがあるが、決して侵略的で派手なものではなく、演技とストーリーを前面に押し出したものである。ニコラス・ブリテルの音楽は、過剰になりがちだが、ありがたいことにそうならず、心に染み入るような厳かな雰囲気を保っている。
まとめと感想
たった一人の男が続けた犯罪をどうやって証言させるか、彼はチームを組んで弱みを握り金をつかませ沈黙させるために秘密保持契約を結び二度と業界に出てこないように手を打つ非道な男だが、小さな一歩を続け説得し信じる道を歩いた結果、小さな声はやがて世界を包み込む大きな現象となり文字通り世界を変えた。
キルビルの時なのか、パルプフィクションの時なのかはわからないけど、ユマ・サーマンに対しても虐待をしており、タランティーノ監督が守れなくてごめんって謝罪しているのをどこかで読んだ。
どんなに見事なプロデューサーの手腕を持っていたとしても業界の英雄だったとしても、悪は滅びるようになっているのだ。
ドキュメンタリー風だが、淡々ときついことをされた女性の話を延々と聞き、誰も話せず涙を流し口を閉ざすシーンが続き結構見ていて辛い、ついでに言えばエンタメ風に昇華されているが眠い。あと展開とセリフが難しいので気楽に楽しむと言うよりは、貴重な資料のように楽しむ方が良いかも、見終わった後スッゲェ疲れた。
2024年アメリカ公開映画
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