「訳が分からない」「知的なSF作品」賛否両論なクローネンバーグ新作SF映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(原題:Crimes of the Future)』はイグジステンズを彷彿とさせる人間と機械のバイオテクノロジーと人類の歪んだ進化、政府、陰謀、企業など複雑に絡まったグロテスク、ボディアートなど肉体を過激に改造するなど人類が痛みを失う進化を遂げた未来の出来事を描いた作品です。訳が分からない。海外の感想も紹介
デヴィット・クローネンバーグ監督の息子”ブランドン・クローネンバーグ”監督作「ポゼッサー」エンディングまでネタバレはこちら
もくじ
映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』作品情報
あらすじ
「人類が人工的な環境に適応するにつれ、身体は新たな変化と変異を遂げる。著名なパフォーマンス・アーティストのソウル・テンサーはパートナーに付き添われ、自分の臓器の変容を披露する。一方、謎のグループがソウルの知名度を利用して、人類の進化の次なる段階に光を当てようとする」
監督
デヴィッド・クローネンバーグ
脚本
デヴィッド・クローネンバーグ
出演
ソール・テンサー(ヴィゴ・モールテン)
カプリス(レア・セドゥ)
ティムリン(クリステン・スチュワート)
ウィペット(ドン・マッケラ)
ラング・ドトリス(スコット・スピードマン)
コープ刑事役(ウェルケット・ブングエ)
ナサティール博士(ヨルゴス・ピルパソプロス)
ブレッケン役:(ソトス・ソティリス)
映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』物語ネタバレ
先に言っておきます、この映画はクローネンバーグ節が炸裂しており、正直って私は一見しただけでは意味が分からず困惑しています。一度見たことを思い出しながらネタバレを書き、そして改めて文章で意味が不明になっている部分を補填しています。
それでも訳が分からない内容だと思いますが、ごめんなさい、この映画理解できる人がいるなら話を聞いてみたいぐらい理解できませんでした。
これからネタバレを読んでいくと思いますが、きっと意味が不明だと思います。でもこの映画の大筋は間違いなく合っています。本当に意味が不明なんです。
先に知っておきたいこの映画の背景。
映画「Crimes Of The Future」が何年の出来事なのかは不明だが遠い未来の地球。公害と気候変動の悲惨な影響が人類に歪な進化をもたらしていた。肉体と機械を直接接続して制御できる生体機械との融合、バイオテクノロジーの著しい進歩を生み出していた。
同時に、人類は、その起源が定かでない生物学的変化によって“人類の圧倒的多数が身体的苦痛と感染症を消失“していた。
これにより、通常の環境下でも意識のある人に安全に手術を行うことができる恩恵もあるが…、痛みを失ったことで生命を証明するかのような過激な生体改造パフォーマンスがアングラでは人気を博していた。
しかし、とある辺境の地で、より急激な生理的変化を経験した人間もいる。
それが冒頭に登場する“プラスチックを食べることができる”少年ブレッケンである。
海辺。
巨大な船が横倒しになった浜辺にいる少年ブレッケン(ソゾス・ソティリス)は母親の声かけに応じ家に帰る。その後、バスルームで体を洗うと、プラスチックのゴミ箱を一口ずつ食べ始める。母親が見守る中、彼はゆっくりと、慌てることなく食べ続けた。
彼の母親、ジュナ(リヒ・コルノフスキー)は、眠っている少年にまたがるとの枕を手に取り少年の顔に強く押し付け窒息させる。そして、ブレッケンの父親に自分が息子を殺したことを知らせる電話をかけ、「自分はいなくなるけど、遺体はそこに置いていく」と言い残す。
案の定、しばらくしてラング(スコット・スピードマン)が家にやってくると、彼女は跡形もなく消え、ブレッケンの死体が、彼女が逃走したときと同じ場所に同じように横たわっていたのを見かけラングは打ちのめされ涙する。
ソール・テンサー
ソール・テンサー(ヴィゴ・モーテンセン)が、身体のあらゆるニーズに適応するように設計された驚くべきテクノロジーの集合体「オルチベッド」(見た目は芋虫を半分に裂いたようなグロテスクで生々しいゆりかご)の中で目覚める。彼を起こしたのはパートナーであり芸術的なコラボレーションを行うカプリス(レア・セドゥ)と話をし、ペースト状の食事を消化促進機能がある動く生物的な椅子に座って朝食をとる。
二人はパフォーマーである。テンサーの「加速度的進化症候群」と呼ばれる“常に新しい内臓が発生する病気“を利用し、ライブ観客の前で内臓を手術で除去して取り出すというグロテスクで過激なパフォーマンスを生業にしていた。しかし余ったとはいえ内臓を取り出す代償として彼は前述したオルチベッドや食事を補助するための椅子など、数々の特殊な生体機械に羽目になっていた。そしてこの新しい内臓が生まれる度に痛みを伴うことものちに判明する。
国立臓器登録書と秘密政府警察
テンサーとカプリスは国立臓器登録所を担当する官僚ウィペット(ドン・マッケラー)とティムリン(クリステン・スチュワート)と面会する。
ついにパフォーマンスが始まる。謎の生物のようにも見える謎のカプセルに入るソール。カプリスは胸に取り付けたコントロール装置でソールのカプセルに備わっているアームを動かし、ソールの腹を割いて内部から臓器を取り出すパフォーマンスを行う。多くの観客を魅了して終了したライブパフォーマンスだったが、その近くで、ブレッケンの父であるラングの姿があった。彼は紫色のチョコバーのようなものを食べ始める。食べかけをバーカウンターに置いていたらそれを奪い食べた見知らぬ男が痙攣して嘔吐し死亡してしまう。その姿を感情もなく見つめたラングはその場から立ち去る。
ショーを見学していた官僚の一人、ティムリンは、ソールのパフォーマンスに魅了され「外科手術は新しいセックスだ」と言い、ソールもその意見を良い意味で受け入れているように見える。
ある政府警察に所属するコープ刑事(ウェルケット・ブングエ)が、ソールに過激な進化論者の集団に潜入するように依頼する。カプリスに内緒で、ソールは別の主催者による生物学的パフォーマンスアートショーを見学する。“全身に耳を縫い付けた“ダンサーを見学しているとアングラ界隈で有名なソールは進化論者の組織に潜入することに成功する。
進化論者達とプラスチックバー
その中の一人、元美容外科医のナサティール博士(ヨルゴス・ピルパソプロス)は、ソールの胃に膣を、簡単に胃にアクセスできるように開腹が容易になるジッパーを取り付けカプリスはそれを使ってソールの内臓に口で愛撫を行いセックスをする。ソールに好意を抱くティムリンからも迫られたが、彼は「昔のようなセックスはできない」と拒む。
ソールは進化論者達は消化器官を改造し、プラスチックなどの合成化学物質を食べることができるよう半ば強制的に進化するラングや進化論者たちと出会う。彼らの主食は、例のラングが食べていたプラスチックバーだった。しかしその成分は有毒廃棄物を紫色に加工した猛毒で普通の人が食べたら致命的な毒である。なぜそのようなことを求めているのか?
ラングとその信奉者たちは、他の進化とは異なり、人類の発展をさらに加速させ、より速くすることを決意したという。テクノロジーと人類の結婚を、支持すべきものと考えていること。
人類は現状の最悪な世界で生きていけるところまで進化しなければならないと思ったこと。彼や彼の教団がプラスチックを食べ、消化できるようにするための手術を受けることは、人類の進化の次の段階において極めて重要であることを熱弁する
そのために彼としてのプラスチックバーを生産する工場を開設したこと。息子ブレッケンの死後、ラングはカプリスとソールに息子の遺体を公開解剖してもらい、人間がプラスチックを食べても大丈夫なように進化できることを世間に知ってもらおうと計画してた。
多くの観客やメディアの前で有名なパフォーマーであるソールとカプリスがブレッケンの公開解剖をして進化を見せつけることで、人間の発展を恐れる必要がないこと、テクノロジー、機械、そして人間が融合し、その未来がつながっていくために。ブレッケンが死んでいたとしても人類の進化を恐れる必要がないことを人類全員に伝えることができるからだと言う。
ソールは悩んだ末に承諾する。
エンディングネタバレ「ソールは進化したのか?」
ティムリン、ラング、そして多くの人々が見守る中、ソールとカプリスは解剖を行うが、ブレッケンの内臓系は外科手術によって置き換えられていることが明らかになる。
一体どういうことだ!?ラングは泣きながら会場を後にする。外では、ソールの生体医療機械を製造している会社の2人の女性が優しく声をかけ、ナサティルを殺した時と同じように、ラングの頭に電動ドリルを深々と二本打ち込み暗殺してしまう。
コープ刑事と会い実はブレッケンは確かにプラスチックを食せる確かに進化した内臓だったため、人類の進化に逸脱があったことを世間に知られないようにするため、ブレッケンの臓器を事前に交換していたことを知る。ブレッケンとラングの死に悲嘆にくれたソールは、もう警察に仕えないことを伝える。
ソウルが再び椅子で食事をしようと奮闘していると、カプリスがプラスチックの棒を1本手に取る。それを食べて消化できなければ死を意味するのだが、彼はとにかくやってみようと決心する。カプリスは指輪型のカメラを手に取り、彼が初めてそれを食べる瞬間を撮影する。モノクロで撮影されたこの映像では、プラスチックを食べながら、ソウルが感情を爆発させるように見える。
自分自身と調和し、自分の中の変化が死の宣告ではないことを知ったソウルは、顔のアップで一筋の涙を流している。
IMDb「6.6点」海外の評価紹介
8/10
不穏な空気よりも考えさせられるが、それにもかかわらずしっかりとした作品である。
8年の歳月を経て、クローネンバーグはついに、「もし人間が痛みを感じなくなったら」というシンプルな前提のもとに戻ってきた。もし人間が痛みを感じなくなったら……」というシンプルなテーマを掲げ、8年ぶりに復活したクローネンバーグは、そのアイデアを発展させ、最も興味深い長編作品の1つ、そして映画界への復帰を大いに歓迎している。この映画は、単純に怖いものを見たいのであれば避けるべき映画ですが、もっとアイデア重視のものを探しているのであれば、素晴らしい作品になるかもしれません。
この傾向は『未来の犯罪』でもさらに極端に進み、醜悪な身体切断と進化の本質に関する考察が並存している。彼の創り出した魅力的な世界を巧みに探求し、観客にその意味を考えさせる、最も知的な長編作品のひとつである。
臨床的な演出と撮影は、当然ながら人によっては不快に感じられるかもしれない。しかし、そのおかげで、無菌でほとんどカジュアルな雰囲気が生まれ、人体への感情移入ができない未来の姿をうまく表現している。もはや、人体は自然の造形物ではなく、好きなように成形できる白紙の状態に過ぎないのだ。
このような映画は、演技のレベルが低いと本当に崩壊してしまいますが、幸運なことにキャストが一様に素晴らしいのです。この映画では、人間が自分の臓器を引きちぎって切り刻むという、苦痛の後の世界というアイデアを、熱狂的な見物人の前で売り込むことができるのだ。クリステン・スチュワートは誰よりも難しい役どころだが(その理由はあまりにも興味をそそるので割愛)、見事に演じきっている。
クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」は完璧な映画か?間違いなく違う。脇役の活躍が少ないし、人類とテクノロジーに関するメッセージは、本来あるべき響きをもっていない。しかし、最終的には、この映画は目指しているものをほぼすべて達成している。グロテスクで、心理的に刺激的で、適切な方法で抑制されており、全体として完全に満足できる映画である。クローネンバーグが次に何をやるのか、楽しみだ。
8/10
知的なSFのアイデア
美しく、魅力的なストーリーテリングの傑作。複雑で微妙なニュアンスを持つ、見事なSFのアイデアを盛り込んだ思考作品。報道では、不穏なボディホラーの瞬間がいくつか取り上げられたが、この映画はそんなものではない。現実世界のように痛みが認識されない世界では、それを目の当たりにしたときの不快な反応は感じられるべきではない。報道では、この映画がマゾヒスティックな「痛み=セックス」のタブーに過ぎないように思われたが、痛みや快楽の要素は世界の機能であって、その意味ではない&持続的な大きなテーマですらないのである。ボディホラーの瞬間は素早く、細心の注意を払って行われ、執着もない。その代わり、登場人物が自然に変化する人体構造を受け入れるか受け入れないかが、映画のメイン・アイデアの中心となっている。監督が得意とする不安感は、ここにもあり、素晴らしい。その背景にある、大人の頭脳で考え抜かれた複雑な発想が、ずっと心に残り、こうして映画は成功するのです。おそらく一生忘れることはないだろう。
8/10
映画全体は、映画が決して到達しない価値のある途方もないクライマックスに向かって構築されているように感じられるが、コンセプト的には、これは見事だ
未来の犯罪』(2022)は、昨晩、妻と映画館で観た映画です。ストーリーは、手術と痛みが新しいセックスとなった未来を描いている。未来では痛みを感じないので、彼らは人体の限界に挑戦する。実験が進み、人体は科学が見たこともないような新しい進化を遂げ始め、政府は社会から隠蔽しようとする。地下観測は、人体とその進化を探求する白色化手術への怒りとなっている。
本作は、『デッドリンガー』のデヴィッド・クローネンバーグが監督を務め、『ロード・オブ・ザ・リング』のヴィゴ・モーテンセン、『トワイライト』のクリステン・スチュワート、『スペクター』のレア・セドゥ、『アンダーワールド』のスコット・スピードマン、が出演している。
この作品のストーリー、設定、撮影、環境は、独創的でユニーク、そしてよくできています。特殊効果は一級品で、素晴らしい手術シーンと血しぶきもある。登場人物はミステリアスで予測不可能であり、この映画には途方もないプロットとサブプロットが存在する。唯一の不満は、映画全体が、価値のあるとてつもないクライマックスに向かって構築されているように感じられるが、映画はそれを達成できていないことだ。
全体として、この映画はその可能性を完全に達成することはできないが、ワイルドなエンターテイメントであり、絶対に見るべき映画である。7.5点/10点で、強くお薦めする。
まとめ:文系には無理な難解映画
脳みそが痛い。いや、痒い。
なんだこれ?
初めに思ったのはイグジステンズだった。と思ったらそういえばクローネンバーグ監督作品じゃん、この監督のことはそんなに詳しくないけど、未来を先読みしてVRどころじゃない意識を仮想現実に転送して現実との境界線を曖昧にした挙句に、視聴者も惑わせてくれた印象がある。(オチは好きだった記憶はある)とにかく難解なことを難解に描く印象の監督だったが、今作はもっとわかんない。
最後、個人的にソールはプラスチックバーを食べることに成功したんだなーと思ったんだけど、、他の海外レビューではそんな簡単な回答には一切言及せず知的なSF作品と言っていた。うん、私には荷が重い作品だった。パートナーはこれを一緒に見てくれないだろう。この映画を見た日本人は何を感じたのかを是非聞いてみたい。
記事に関する批判はスルーしています。
2024年アメリカ公開映画
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